全面実施期限が2015年7月21日の「ボルカールール」の最終案概要

ボルカールール
「先細り」を意味する「テーパリング」は、金融業界では政府による量的緩和(QE)が徐々に終わりに向かうことを言います。

FRBは経済活性化のために市場にどんどんお金を流していますが、その蛇口の栓を次第に閉めていくことになると「テーパリング」ということになります。




ただ来年1月に任期を終える米連邦準備理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長と後任のジャネット・イエレン副議長は、量的緩和政策を当面続けるとキッパリ言いきりましたので、低金利と市場への資金供給は来年中は続くでしょうから、まだ「テーパリング」は先の話だということになります。

中央銀行がこうした金融政策の見通しを発表することを、「フォワードガイダンス」といいます。

今年の夏、FRBのバーナンキ議長が「テーパリングを早めに行う」とフォワードガイダンスを行ったことが、新興国市場でちょっとした経済危機を引き起こしました。

量的緩和の終わりは、たいてい金利の引き上げが伴います。

そのため、金利が高くて信頼の高い米国債の方が魅力的だという期待が膨らみ、途上国に流れていた資金がアメリカ市場に逆流し、途上国の通貨価値が下落する事態まで起こりました。

「巨大銀行は多くの預金者を持つことから取引に失敗しても政府が救済してくれる」という魂胆をつぶす目的で元FRB議長のポール・ボルカーが主導して巨大な銀行が巨大なリスクを負う金融取引を取り締まるルールを定めました。

これを「ボルカー・ルール」といいます。

米規制当局は2013年12月10日、銀行の自己勘定取引を規制する「ボルカールール」の最終案を公表しました。

全面実施期限は2015年7月21日となっている最終案の概要は次のとおりです。

<自己勘定取引>

銀行が証券、デリバティブ(金融派生商品)、商品先物・オプションの短期的な自己勘定取引を行うことは禁止される。

ただし以下の例外項目が設けられる。

1)引受業務:銀行の持ち分が「目先の妥当な顧客需要見通しを越えない」限り、公募または私募の公開に利用するための証券保有が認められる。

2)マーケットメーキング:顧客のために「定期的に売買を行う用意ができている」証券の保有が認められる。銀行の持ち分が顧客の需要に沿っているか判断するための厳格な要件が導入される。

3)ヘッジ:構築するポジションにより、特定、かつ識別可能なポジションが「確実に縮小、もしくは大幅に軽減」されると証明できる限り、リスク・ヘッジを行うことができる。

銀行はこうしたポジションを監視し、調整する必要がある。

銀行はこれまで、包括的なヘッジを行う「プロキシー・ヘッジ」や「ポートフォリオ・ヘッジ」と呼ばれる手法を用いて投機的な取引を隠すことができたが、今回の規制でこうした取引はできなくなる。

<国債>

適用除外範囲を拡大した。外国国債については、米国債よりも規制が多いものの取引が可能となる。

<ファンド>

銀行が個々のヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンドの総資産の3%以上の出資を行うことを禁止。投資総額がファンドの総資産の3%、および銀行の中核資本の3%を上回ることも認められない。ただ、ファンドの定義は緩和された。

<経営陣>

銀行の経営陣は、規制を順守するために適切なプログラムを社内で実施していることを証明する必要がある。ただ、自行が規制を順守していることを自ら確認する義務はない。

<外銀>

外国銀行は、リスクの所在が米国外であることを条件に自己勘定取引が今後も認められる。米国機関との取引については特定の状況に限り認めることで、安全性強化を図る。

<順守期限>

規制は2014年4月1日から施行されるが、順守期限は2015年7月21日とする。大手金融機関に対する一部の報告義務は先行して導入される。

ボルカー・ルールは、2008〜2009年に起こった金融危機以降、最も重要で賛否の分かれるものですが、その内容はほとんど理解されていません。

「ドッド=フランク法」によって、巨大投資銀行では既に「自己勘定取引」で米政府保証資産の投機的売買をすることが禁じられています。

しかし、銀行が証券取引所などの市場を通さずに自己資金を使って顧客のために株や債券を売り買いする「プリンシパル・トレード」も、市場を脅かしかねません。

もしまた「政府は大き過ぎて銀行をつぶせない」と思えば、投資家は過大なリスクをとるからです。

2012年にJPモルガン・チェース銀行が62億ドル(約6400億円)という巨額損失を引き起こしました。

取引と損失規模の大きさから「ロンドンの鯨」と呼ばれたこの事件では違法取引と隠ぺいも発覚しました。

こうした取引は、ボルカー・ルールがまさに今後標的にしようとしているものです。

JPモルガン・チェース銀行は結局、約9億2000万ドルの罰則金を支払うことになり、2人の元行員が訴追されました。

それでも、金融規制が進んでいるから巨額の損失をもたらす危険な取引はもう無くなるはず、と安心できません。

新しい用語ではありませんが「シンセティック債務担保証券(SCDO)」という用語にも要注意です。

SCDOは、保険やその他の金融派生商品(デリバティブ)を担保にして非常に少額の現金で株を買う手法のひとつです。

英フィナンシャルタイムズが先週報じたところでは、シティグループは最近、金融危機の引き金にもなったこの危うい金融取引を専門に扱うアナリストを募集しています。

この金融商品はより透明性が高く、資本主義を破滅の寸前まで追い込んだサブプライム・ローンの類は含んでいませんので間違いなく一歩前進です。


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