糖質制限ダイエット
ご飯やパン、芋、果物などの炭水化物に含まれる糖質の摂取量を一日130g以下に抑えれば、おかずはなんでも好きなだけ食べていいという「糖質制限ダイエット」。

もともとは糖尿病や重度の肥満患者に対する食事療法として考案されたものですが、糖質さえ制限していれば、あとは肉でもアルコールでも摂取OKという取り組みやすさと、目に見えて現れる効果で老若男女を問わず人気を集めています。

炭水化物の糖分は体内で中性脂肪に変わり、人間のエネルギー源となります。

炭水化物を絶つことで中性脂肪を減らして痩せる、いたって単純なメカニズムのダイエット法です。

人間には一日170gの糖が必要とされています。

そのうちの120~130gは脳で消費され、30gは全身に酸素などを運ぶ赤血球のエネルギー源として消費されます。

糖質は、生命を維持するために欠かせない栄養素なのです。

糖質を制限してしまうと、代わりにタンパク質を構成しているアミノ酸を、肝臓が糖に作り変えるというシステムが働き始めます。

タンパク質を糖に変えられるなら、肉を食べれば問題ないのではないかと思う方もいるでしょう。

しかし、人体の維持に必要なエネルギーをタンパク質や脂質でまかなおうと思ったら、毎日大量の肉を食べなければなりません。

数kgもの肉を毎日食べ続けることは現実的に不可能です。

糖エネルギーが不足すると、それを補うために、体は自分の筋肉を分解してアミノ酸に変えていきます。

結果、筋肉量がどんどん減っていってしまうのです。

実は糖質制限ダイエットには、はっきりした科学的根拠やガイドラインがありません。

ですから、評判ばかりが独り歩きして、過剰なやり方が横行します。

若い人や糖尿病患者が、医師の指導のもとで一定期間やるのはいいでしょう。

しかし、65歳以上の高齢者は安易に手を出すべきではありません。

寝たきりになる危険性が非常に高いからです。

糖質制限ダイエットが引き起こす問題は、筋肉量の低下だけではありません。

実は骨にも甚大な影響を及ぼします。

ダイエットは女性のほうが熱心だからでしょうか、骨粗鬆症は圧倒的に女性に多く、60歳代で2人に1人、70歳以上で10人に7人が悩んでいます。

筋力が低下したり、骨粗鬆症になってしまった高齢者は、ほんのちょっとの病気や怪我で入院すると、あっという間に寝たきりになってしまいます。

一度失った体力を元に戻すのは容易ではありません。

多くの場合、みるみる足腰が衰え、家族やヘルパーの手を借りなければ日常生活が送れなくなります。

食事、入浴など身の回りの世話はもちろん、いずれトイレも自力でできなくなってしまいます。

妻や子供におむつを取り替えてもらうのが、もっともつらいと明かす人も少なくありません。

思うようにならない毎日に絶望し、もう誰とも話したくないと思い始めたら、認知症までまっしぐら。

やがて判断能力がなくなり、家族の顔も忘れ、孤独のうちに一生を終えることになります。

これだけでは終わりません。

糖質制限は、他にも寝たきりに繋がる病気を誘発すると言われています。

厚生労働省の国民生活基礎調査によりますと、65歳以上の高齢者が寝たきりになる直接の原因は、1位が脳卒中、2位が認知症、3位が衰弱・老衰で、4位が骨折となっています。

実は、寝たきりの原因1位の脳卒中も、糖質制限ダイエットと深い関わりがあるということが、最新の医療調査で明らかになりました。

一般的に、糖質制限をするとカロリーを補うために脂質やタンパク質を大量に摂るようになります。

すると、血管に悪玉コレステロールが溜まっていきます。

その結果、血管が傷んだり老化が進んだりして、脳梗塞や心筋梗塞を起こす可能性がどんどん高まっていきます。

筋力低下、骨粗鬆症、動脈硬化が引き起こす脳卒中—さまざまな病気との関係が指摘される糖質制限。

今、糖質制限ダイエットを実践している人は幅広い年代に広がっています。

今後さらに時間がたてば、間違いなく寝たきりになる人が続出すると予測されます。

命の危険すら指摘され始めた糖質制限ダイエット。

だが、「痩せる」という効果があることは否めません。

「身体にやさしい糖質制限」という都合のいいダイエット法はないのでしょうか。

高齢でも、体型がどうしても気になる、という人はたくさんいると思います。

そういった人は、甘い菓子などの炭水化物の間食を辞めるだけで、大きな効果が得られるはずです。

高齢者にとって、タンパク質は何よりも重要で貴重な栄養素。

糖質制限のやりすぎで、不足する糖を補うためにタンパク質を消費することは、絶対に避けるべきなのです。

筋肉だけでなく、臓器や皮膚や骨、血液に至るまで、人体のすべての細胞はタンパク質でできています。

そして細胞は、1年後にはすべて新しい細胞に生まれ変わります。

高齢者は消化吸収能力が落ちているため、男子高校生より体重1kgにつき必要な1日のタンパク質の量が多い。

そうでないと、体が維持できないからです。

そんな高齢者が糖質制限をすれば、内臓組織の原料となるタンパク質が不足し、体はどんどん老化します。

だから原則的に、糖質を減らしてはいけません。

やるとしても、おやつなどの間食を抜くだけにする。

高齢になったら、糖質とタンパク質、両方のバランスをよく考えて食事をすることが望ましいのです。

大事なのは、ダイエットは何のためにするのか、ということ。

見た目だけが少し良くなったとしても、肝心の健康を損なったのでは何の意味もありません。

是非このことを念頭に置いて、自分の身を守っていただきたいと思います。

特に高齢世代は、ブームだからといって「糖質制限」に飛びつくと、寝たきりのリスクが劇的に高まることを忘れてはいけません。