黒田日銀総裁が消費増税の修正論議に釘を刺す本当の理由

黒田日銀総裁
安倍首相は8月8日朝、閣議後の閣僚懇談会で、甘利明経済財政・再生相らに「消費税率の引き上げについて、この道筋が確かなものかきっちりと判断する必要がある」と指示し、増税が脱デフレを阻む恐れがないか慎重な検証を求めました。




安倍首相は「あらゆる知見を吸収したうえで、この秋にはデフレ脱却、経済成長と財政再建の両方の観点から内閣の責任において私が最終判断したい」と強調しました。

ムーディーズ・インベスターズ・サービスは8月8日付のリポートで、安倍政権の経済政策「アベノミクス」が日本政府の信用力に与える影響について分析しました。

その中で、日本が20年に及ぶ景気低迷に終止符を打てるかどうかは、民間資本形成の促進にかかっていると強調する一方、日本再興戦略が持続的成長をもたらさない場合、政府が抱える信用力上のリスクを増幅させ、高水準の政府債務がさらに膨らむ可能性があることを指摘しました。

政府の信用力が低下し、国債市場への信認が失われ、日本国債の最大の保有者である銀行と保険会社を含む金融システムが不安定化する恐れがあると心配しています。

日銀による異次元緩和の効果もあり、景気はようやく回復局面に入りましたが、消費者物価指数(生鮮食品除く、コアCPI)も6月にプラスに転じたばかりで、日銀が目標に掲げる2%の上昇率を実現するには、まだまだ時間がかかるのが実情です。

ですから消費増税に消極的な意見から財政再建への懸念が強まり、長期金利の上昇など市場に予期せぬ混乱が生じれば、異次元緩和がもたらした効果が減殺され、追加措置を迫られる可能性も否定できません。

日銀の黒田東彦総裁は8月8日の政策決定会合後の記者会見で「脱デフレと消費増税は両立する」と増税の先送りや増税ペースの見直しなどの動きに釘を刺しました。

この黒田日銀総裁の発言には、増税案が変更された場合、政府の財政再建の機運が後退し、日銀による大規模な国債買い入れが「財政ファイナンス(穴埋め)」と市場に受けとられることへの危惧も透けて見えます。

黒田日銀総裁は消費税率が上がる直前には住宅や大型の耐久消費財の駆け込み需要が生じやすいので、2014年度はその反動が予測できますが、予定通りに来春から2段階で増税しても、2014年度、2015年度ともに1%台の実質経済成長率を保てるとの見方をしています。

日銀は4月の異次元緩和の導入によって、市場で発行される国債の7割程度を吸い上げる大規模な国債買い入れを進めています。

これを市場が財政従属や財政ファイナンス(穴埋め)と受けとめ、長期金利が急上昇する、というのは何としても避けたい不安シナリオです。

しかし消費増税が延期や見送りなどになった場合、国債市場で債券売りを仕掛けようと狙っている可能性が少なくありません。


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