李克強首相
中国政府のシンクタンクである社会科学院は10月9日、中国経済における「影の銀行(シャドーバンキング)」の規模が20.5兆元(約328兆円)に達している可能性があることを明らかにしました。

もし20.5兆元という数字が正しいとすると、これは中国のGDPの約40%、貸出総額の16%を占めることになります。

1990年前後、日本はノンバンクの不動産融資が膨張してバブル崩壊となりました。

2008年、米国はサブプライムと呼ばれる不動産融資が膨張してバブル崩壊となりました。

バブルが崩壊した当時の日本や、リーマンショック当時の米国について、中国と同じ条件で計算すると融資総額はGDPの1.5~1.7倍程度になります。

中国のGDPに対する融資総額(シャドーバンキングを含む)の比率は2.5倍ですので、中国はいつバブルが崩壊してもおかしくないことになります。

日米は融資総額がGDPの1.5~1.7倍になった段階でバブルが崩壊しています。

中国がもし自由市場の国であれば、同じ水準になった段階ですでにバブルは崩壊していたでしょう。

しかし中国経済は現在も崩壊せずに何とか状況を維持しています。

それは中国経済が国家によって統制されていて、私有財産を無視した強権的な市場安定策や不良債権処理が可能となっているからです。

野村ホールディングスは最近、中国地方政府の債務規模がここ数年で39%拡大したという驚くべき状況にあると伝えました。

野村ホールディングスのエコノミストは、中国当局は市場紀律を強化する為、来年一部地方政府に債務不履行が発生することを容認するのではないかと予測しています。

つまり、中国共産党当局が地方政府破産の幕を開ける可能性があるとのことです。

野村ホールディングスのチーフエコノミスト張智威(ちょう ちい)氏は9月26日の報告の中で、2012年末までに地方政府の負債は2010年に比べ39%、19兆元増加したと述べました。

これは中国GDPの37%に相当します。

張氏は、流動性リスクが上昇していると指摘し、869の地方政府の融資プラットフォームに対する研究の結果、地方政府の支持が無かったら、昨年は半数以上の地方債務に不履行のリスクが存在したことが分かったと示しました。

報告書ではさらに、市場紀律強化のため、中国当局は来年個別の債務不履行を容認し、これによりその他の地方と投資者に警告する可能性があると指摘しています。

債務不履行とは、つまり破産したことを意味し、その債務は帳消しになり、政府も破産したということで投資した人が不運なのです。

野村ホールディングスが指摘した中国当局の容認する地方政府の債務不履行には2つの可能性があります。

ひとつは証券新聞による情報の推測で、もうひとつは、共産党上層部が噂を流し、国内外の動きを探る可能性があります。

北京天則経済研究所・馮興元(ひょうこうげん)副所長の計算では、地方政府の債務はGDPの40〜50%を占めています。

全国の債務はすでに86〜90%以上に達しています。

中国の多くの県が抱える負債額は既に地方財政の5〜10倍に達し、返せない額なので、実質破産しているのです。

また、ある資料では、ここ2年の地方政府の債務は深刻で、ほぼ倍増していると報告されているそうです。

ここ数年、激増している銀行の貸し付けや地方政府負債額が、中国経済回復の主要な駆動力となっています。

特に、2008年の4兆元の経済刺激策によって多くのプロジェクトが開始されました。

現在、地方政府はインフラプロジェクトの資金獲得の為に1万以上の融資プラットフォームを設立していますが、多くの企業は今、返済の為に新たな借り入れを起こさねばならない窮地に陥っています。

中国政府は任期制で、各任期の指導部は政治的成果を上げようとします。

しかし債務は次期指導者に残すことが出来ます。

ですから、どの政府も資金を使う事だけ考え、支払いがしたくないのです。

これが悪循環となり、政府の債務はますます増えるのです。

中国の社会制度が変わらなければ、政府に対する監督、制約メカニズムは何もないので、この様な現象を抑制することは出来ないと思います。

ブルームバーグ・ニュースが今年7月に行った調査では、調査に応じた経済学者の半数が中国地方政府と企業の不良債権は、中国の貸し付けと経済成長に“大きな打撃”を与えるだろうと考えていることが明らかになりました。

中国当局はこのため、一連の行動を起こしていますが、国務院が7月末に出した地方政府に対する債務監査がその1つです。

7月11日、李克強首相も、“皆が注目している中国の地方政府債務問題に対し、方向性のある措置を採り、秩序ある解決方法を採っている”と公に述べました。

米サウスカロライナ大学の謝田(しゃでん)教授は「中小都市大きな影響を与えることのない、都市を破産させ、救済しないでしょう。それから、一部官僚を処罰し、見せしめにするのです」と語っています。

謝田教授は、中国には“上に政策があれば、下には対策がある”という言葉があり、当局の今回の措置に対しても例外ではないと話します。

一方、後ろ盾を持たない一部の地方官僚や民間企業投資者、個人企業などは被害者になるだろうと考えます。

段紹訳(だん しょうやく)さんは、中国当局は容易に紙幣増刷によるインフレ、不動産価格の引き上げ等の方法で、債務危機を一般民衆に転嫁することができると指摘します。

李克強(り こくきょう)首相はこのところ中国経済の運営に自信を示した発言を繰り返し行っています。

もしかすると、強制的な不良債権の処理にある程度メドがついているのかもしれません。

ですが仮にそうなった場合でも、不良債権を完全に処理するまでには、最低でも米国と同じ程度の期間を要する可能性が高いです。

振興国としての高度成長が背景にあるとはいえ、当分の間、中国経済は低空飛行が続くことになるでしょう。