「産業の6重苦」の解消は進んでいるのか検証すると・・・

産業の6重苦
産業の6重苦とは、①円高、②高い法人税率、③経済連携協定の遅れ、④労働規制、⑤厳しい環境規制、⑥高い電力料金、以上6つのことです。




これらについてはアベノミクスで既に対策が講じられているものもあれば、まだ手つかずのものもあり、対応はまちまちですので、ここで一旦整理しておきたいと思います。

まず①の円高ですが、これについては日銀による大胆な金融緩和が行われたことにより、修正が進んでいると考えていいと思います。

次に②の高い法人税率については、事前の協議で議題には上っていたようですが、残念ながら成長戦略の第1弾では見送られてしまいました。

③の経済連携協定の遅れに関しては、当初は前進しないかとも目されていましたが、TPP交渉への参加が実現しました。

経済連携協定はTPP以外にも、日中韓FTA、インドなども含めた東南アジアとのRCEP、EUとのEPAなどが同時進行で進められています。

④の労働規制では、正社員の解雇規制の緩和について議論はされたようですが、まだ踏み込んでいません。

正社員の解雇規制を緩和するというと、「企業の都合でクビを切られるようになってしまうので反対」という意見がありますが、実は厳しすぎる解雇規制こそが日本の賃金上昇の足かせになっていることを見逃すべきではありません。

もちろん、正社員として勤めている会社が給料を上げてくれるのが一番望ましいのですが、実際問題それはなかなか厳しいのが現実です。

そこで、手っ取り早く給料を上げるために個人が出来ることといえば転職になります。

しかし、日本の場合、先程の解雇規制のせいで、雇用の流動化が非常に進みにくくなっており、転職がならざるを得なくなっているのです。

つまり日本では、解雇規制が厳しすぎることによって、人材の流動化が妨げられ、それにより若年層の雇用状況の悪化や、適性のない職場で飼い殺しにされてしまう社員が生み出されているのです。

日本経済の健やかなる発展のため、正社員の解雇規制の緩和は、今後の課題として成長戦略の第2弾に盛り込んでほしいと思います。

⑤の厳しい環境規制に関しては、安倍政権で既に民主党政権が掲げた「二酸化炭素の排出削減25%」という約束を撤廃したので、とりあえずOKというところでしょうか。

最後の⑥高い電力料金に関しては、「電力革命」という名目で成長戦略第1弾にも盛り込まれました。

東日本大震災以降、日本は天然ガスの輸入を大幅に増やしましたが、その際、非常に高い価格で売買契約を結びました。

これをジャパンプレミアムといい、解消が強く望まれています。

天然ガスの調達先を多様化することで、ジャパンプレミアムを解消する、発送電分離などの電力の自由化、石炭火力発電の推進および技術輸出、メタンハイドレードの商用化などが具体的に挙げられています。

とくに注目しているのが石炭火力発電です。

実はあまり知られていませんが、今、石炭火力発電は世界中でブームになっています。

その最大の理由は、ここ数年の石炭価格の大幅な下落です。

石炭価格が下がった背景は、アメリカがシェールガス革命で石炭の輸入を減らしたことや、世界最大の消費国である中国の景気が減速したことなどにより、石炭の需要が下がったことです。

石炭火力発電というと、多量の二酸化炭素が出て温暖化防止の流れに逆行するような印象を受けますが、実は今、石炭火力発電の技術は非常に進化していて、従来型の火力発電よりも二酸化炭素の排出量が少なくて済むのです。

その石炭火力発電の技術でも日本はトップを走っていて、その技術をもってすれば二酸化炭素の排出量を大幅に下げることができるのです。

たとえば、日本にある最先端の石炭火力発電所と同じ性能の発電所を、アメリカと中国にある火力発電所に導入するだけで、世界の二酸化炭素の排出量が5%削減できるのです。

ちなみにその量は、日本が排出する1年分の二酸化炭素に匹敵します。

これまで日本では環境アセスメント(大規模開発などが環境に与える影響を事前に調査、評価する手続き)の規制が厳しく、石炭火力発電所を作るのが難しかったのですが、今回の成長戦略で環境アセスメントの規制緩和が行われ、石炭火力発電所の建設が積極的に推進されることになっています。

建設には5年ほどかかるので、まだ先になりますが、石炭火力発電所が稼動するようになれば、国内の電気料金の値下げに貢献することが期待されます。

また、石炭火力発電所を海外にインフラとして輸出すれば、外貨の獲得にも繋がる上、世界の二酸化炭素の削減にも貢献できるので、まさに一石二鳥なのです。

以上、産業の6重苦の解消について、アベノミクスで、どの程度の取り組みが行われているのかを見てきました。

一応、項目としては法人税率と労働規制以外に関しては、何らかの取り組みが進んでいるようですが、まだまだ安心はできません。

電力の自由化については、さまざまなハードルがあるようですし、実際に進むかどうか予断を許しません。

経済連携協定に関しても、まだ交渉のテーブルについた段階で、関税や非関税障壁は残ったままなのを忘れてはいけないでしょう。

民主党政権で経験したように、宣言することは誰にでもできます。

大事なのは、宣言したことを着実に実行することです。

政治の有言不実行を繰り返さないように、大いに期待するとともに、私たちとしても厳しい監視の目を光らせておくべきだと考えています。


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