二人称広告のインパクト

離見の見
見た瞬間、読んだ瞬間、心を惹きつけられる広告やキャッチコピーは、いくつかありますが、次の広告は何年経っても色あせないインパクトのあるものでした。




【人生に多くのことを求める人へ、BMW】

大人の哲学を持ち、子どものような純粋さを持つ人。
主流なのに、心は反主流である人。
スーツを着こなすが、ジーンズもはきこなす人。
人生も語れるが、ジョークもうまい人。
有意義も好きだが、無意味なことも好きな人。
ワインにも詳しいが、恐竜にも詳しい人。
常識は持っているが、決して縛られない人。
ITには強いが、手紙は万年筆で書く人。
家庭を愛しているが、時には家庭を忘れられる人。
孤独も好きだが、社交も上手な人。
常に冷静だが、時に情熱的になれる人。
クラシックも聴くが、ロックも愛している人。
自信はあっても、過信はしない人。
美術館にも行くが、ジムにも行く人。
協調もできるが、反論もできる人。
夜更かしはするが、朝きちんと起きる人。
守るものが多くても、冒険できる人。
部下には易しいが、上司には厳しい人。
食べるのも好きだが、料理もできる人。
上質にこだわるが、贅沢は好きじゃない人。
自分の誕生日は忘れても、約束の時間は守る人。

魅力的な振り幅がある、憧れる生き方と、それに似合うBMW。

BMWのフラッグシップモデルである「7シリーズ」の広告として、2006年にリリースされたものですが、よくありがちな、「BMWは~」という一人称表現を使わずに、BMWに乗ってほしい「あなた」へ向けて、二人称で訴求した斬新な切り口になっています。

お客様に、自分のシーンをイメージしてもらい、BMWは そのシーンの共演者となるクルマであることを印象付ける、記憶に沁み込むインパクトのある広告です。

BMWはもともと、「駆け抜ける歓び」というキャッチコピーで、クルマ好きの人たちの心を捉えました。

「駆け抜ける歓び」とはつまり、ドライバーが味わえる二人称の感動を表現していたのです。

二人称で訴求する広告には、ドキッとするインパクトと共に、高い確率で「共感」という感情が生まれます。

たとえば、「そうだ、京都に行こう。」

何年経っても色あせない、JR東海の名キャッチコピーも、提供側ではなく お客様の言葉で語る二人称の立ち位置の表現です。

企業のスローガンによく見られる「顧客志向」という言葉があります。

「お客様のことを考えて」という とても良い話なのですが、実践しようとすると難しくなる企業がほとんどです。

理由は、この言葉は、「売り手側の立ち位置からの一人称表現」だからです。

舞台の上からいくら客席を見ても、客席から見た舞台の姿は分からないのと同じことなのです。

世阿弥は、演者から見る視点のことを「我見(がけん)」と呼びました。

客席から舞台を見た視点を「離見(りけん)」と呼び、「我見」と区別しました。

一流の役者は この2つの視点を行ったり来たりしながら(「離見の見」=りけんのけん)、最高の演技を創り上げていくのだと説きました。

「顧客志向」ではなく「顧客起点」という立ち位置であれば、離見という視点を表現した言葉になります。

「顧客起点」で見えたニーズやウォンツから「贈り手視点」でアイデアを創造し実践する。

次に「顧客視点」で検証し、改善を重ねるサイクルを回していくのが、ヒット商品に共通した、現代の「離見の見」になります。


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