米下院共和党が認めない医療保険制度改革(オバマケア)とは?

医療保険制度改革(オバマケア)
アメリカ政府機関の閉鎖を回避するための暫定予算成立には上下院が同じ法案を可決、大統領が署名する必要があります。




オバマ政権の医療保険改革法に反対する共和党が多数の下院は当初、医療保険改革関連の歳出を除外した暫定予算案を可決しましたが、与党民主党が主導する上院は9月27日、同歳出を復活させた修正案を可決し、「上院案可決か、政府機関閉鎖かのどちらかだ」と下院共和党に受け入れを迫っていました。

 
しかし、下院共和党は強硬姿勢を崩さず、医療保険改革法実施を1年延期する再修正案を提出し、9月29日未明に賛成多数で可決しました。

暫定予算の期間は12月15日までです。

ベイナー下院議長(共和党)は声明で「米国民は政府機関閉鎖もオバマケア(医療保険改革)も望んでいない」と、上院民主党に再修正案を可決するように要求しました。

CNBCが発表した世論調査では、暫定予算案にオバマケアを盛り込むことに59%が反対しており、賛成は19%にとどまっているのです。

これに対し、リード上院院内総務(民主)は「医療保険改革の変更を迫る企てはすべて拒否する」と明言しました。

カーニー大統領報道官も9月29日、「共和党の要求は無謀で無責任。共和党は政府機関閉鎖に動いている」と非難し、与野党の妥協に向けた協議は行われていません。

 
アメリカ合衆国の財政をめぐっては、10月半ばまでに議会が連邦債務上限引き上げを決めなければ、米国債がデフォルト(債務不履行)に陥る危機にも直面しています。

医療保険制度改革(通称オバマケア)の中心は、「国民皆保険制度」の取り組みにあります。

先進国で珍しく、アメリカは公的医療保険制度に「メディケア」と呼ばれる仕組みを導入しています。

これは高齢者を対象とするもので、高齢者以外は自由診療となっています。

そのため、医療費の窓口負担は非常に高額であり、多くの国民は民間保険会社の医療保険に加入しています。

ところが、ハリケーン「カトリーナ」の被害などで大きな注目を集めたように、加入者でさえ医療費による破産が多く、弱者には厳しい不十分な制度として批判が集まっています。

医療保険未加入者は4000万人以上であり、オバマは就任時から公的な医療保険の導入を公約に掲げてきました。

そして、2010年に国民皆保険制度の導入を進める法律(完全実施は2014年以降)が成立したものの、今度は各州から「連邦政府が保険加入を義務付けるのは州の自治を侵害する憲法修正10条違反」だと強い反発にあいます。

なぜ、国民皆保険に反発が強いのでしょうか?

ひとつは「税金はもうたくさん」という声です。

これは、保守派の運動「ティーパーティー」の標語の1つにもなっています。

彼らは、オバマ政権の大型景気対策や医療保険制度改革などを批判し、増税なき「小さな政府」を掲げることで知られています。

「自分が働いた金が、失業している怠け者に使われることが許せない」人々は、少なくありません。

彼らは、集会運動で黒人や病気にかかった人々、障害者が「国から金をもらおうとしている」ことを非難しています。

事実、アメリカ議会予算局の試算では、今後10年間で、加入率は83%から95%に上昇しますが、費用も9400億ドルに昇るといいます。

今世紀初頭より、国民皆保険はアメリカの目標でした。

古くはセオドア・ルーズベルト大統領も導入を試みたものの失敗していて、その後もトルーマン、ニクソン、クリントンの各大統領が同様の改革を目指しましたが実現できませんでした。

民間の保険会社をはじめとして、この制度に反対する勢力は数多くあり、「小さな政府」のかけ声が流行った頃には、国民皆保険という制度は特に評判が良くありませんでした。

しかし、国民一人あたりの医療費は膨張し続け、民間保険の医療保険料が高騰したため、国民の15%が無保険にあるという状態です。

米議会予算局の長期的な米財政予測によりますと、債務水準を安定させるためには向こう10年間で、2兆ドルもの追加的な歳出削減が必要という見解を示しています。

国内総生産(GDP)比で73%にまで達しているアメリカの公的債務は、財政健全化に向けた策を講じなければ、25年後までに100%になるといいます。

連邦債務の法定上限を引き上げない限り、10月末から政府が「デフォルト(債務不履行)」の危機に陥るという衝撃的な財務省の見通しに、現実的な色がつき始めているのです。

もし、このままアメリカの公的債務に関する問題が先送りされることになれば、オバマ大統領の求心力は益々低下することになるでしょう。


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