社会保障費の不正受給を防止するには納税者番号制度が有効

財務省
このままアベノミクスが順調に進み景気が回復していけば、2015年の10月には、消費税は10%に引き上げられます。




しかし、以前の記事の「債務残高の対GDP比は本当に下げられるのか?」で紹介した財政収支シナリオでは、仮に予定どおり消費税を上げられたとしても、2020年の基礎的財政収支の赤字は解消するには至りません。

おそらく消費税率を15%程度へ引き上げることが必要なのですが、そう易々(やすやす)と上げ続けられるものではありません。

2012年に、ようやく消費税増税の法案が通りましたが、前回5%に消費税が上げられたのは1997年の橋本政権のときで、それ以来15年もの間、どの政権も手をつけられなかったデリケートな問題だからです。

増税による歳入増が期待できないとすれば、歳出を抑えるよりほかに方法はありません。

そもそも日本の財政赤字の最大の原因は、増え続ける社会保障費です。

社会保障費

これは、2025年までにどのくらい社会保障費が増えるかを、厚生労働省が試算してものです。

これによると、2025年には社会保障費は148.9兆円に達すると見込まれています。

実に、年率3%以上の勢いで増えていってしまうのです。

今、アベノミクスでは名目経済成長率3%を目指して、さまざまな手が打たれようとしていますが、いかんせん社会保障費の膨張のスピードが速すぎて、とてもではないのですが追いつけないのが実情です。

そこで、社会保障費の切りつめが議論になるわけです。

たとえば、標準報酬月額上限や厚生年金保険率のさらなる引き上げ、第三号被保険者(専業主婦)からの国民年金保険の徴収、公的年金所得の課税特別措置の撤廃などが囁(ささや)かれてはいますが、これらを実施しただけでは金額的に不十分であり、物事は大きく改善しません。

何度も説明しているように、現役世代でリタイア世代を支えるという今の制度はすでに限界にきています。

そこで、今後、求められるのは、社会保障制度を抜本的に変える改革です。

具体的には、リタイア世代も応分に負担するような仕組みへの変更が求められているのです。

もちろん経済的に余裕のない人に対する保障は今後も続けていかなくてはいけません。

しかし、リタイア世代の中には、経済的に余裕のある豊かな人も多数いるので、そういう人への保障は軽くしていく方向への改革が必要なのではないかと考えます。

事実、2012年に成立した年金関連法案では、高所得者に対する老齢基礎年金の一部停止という条項が入っていましたが、最終的に削除されました。

しかし、このような改革をするためには、その前提として経済的に豊かな人と、そうではなく厚い保障が必要な人を明確に区別できなくてはいけません。

実はその方法として、納税者番号制度という制度が導入されます。

これは、2013年に法案が通ったばかりの制度で、2016年から実施される予定なのですが、簡単にいうと納税者に固有の番号をつけて、所得や資産を把握する仕組みです。

この制度については、個人情報の流出やパライバシー侵害の問題などを理由に反対する声もありますが、すでに海外ではアメリカをはじめ多くの国で導入されており、課税の公正化や効率化が図れるというメリットがあるといわれています。

納税者番号制度

とくに消費税の税率を引き上げる際に生じる、逆進性の解消のためには、納税者番号制度は非常に重要な機能を果たしています。

逆進性というのは、生活水準の低い人に、より重い負担がかかってしまうことです。

これを解消するために、2つの方策が検討されています。

1つは、軽減税率といって、食料品ほか生活必需品の税率を上げない方法。

そして、もう1つが給付つき税額控除といい、生活水準の低い人に現金を給付をする制度です。

この給付つき税額控除を適切に運用するためには、所得や資産の正確な把握が不可欠です。

そうしないと、実際にはお金持ちなのに、給付を受ける人が出てくる可能性が高くなってしまうからです。

社会保障費を不正に受け取ろうという輩(やから)は現実に存在しますし、今後もいなくなることを期待するのは難しいでしょう。

このような不正を防ぐ意味で、納税者番号制度は有効なのです。

先ほど、納税者番号制度は2016年から実施されるとお伝えしましたが、運用についての議論はこれからです。

具体的にどのような形でこの制度を利用して、社会保障費を抑えることにつなげるかは、これから本格化する社会保障と税の一体改革の大きな課題の1つですので、注目していきたいと思います。


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