習近平国家主席
中国が日本国債の保有を減らしています。

円安への対応と取れなくもないのですが、それだけでは説明がつきません。

財務省が最近まとめた国別の国際収支統計によりますと、中国が持つ日本国債の額は2013年末でおよそ14兆3千億円でした。

2012年末に比べ、ちょうど3割にあたる6兆2千億円の減少です。

日本国債の国別保有額

中国は2010年にイギリスを抜き、海外で最もたくさんの日本国債を保有する国になりました。

2008年のリーマン・ショックを機にドルへの不安が生じ、4兆ドル近い世界最大の外貨準備のうち、円に振り向ける割合を高めた為です。

一貫して増やしてきた日本国債を大きく減らしたのは何故でしょうか。

すぐに思い浮かぶ理由は、2012年秋からの円安です。

1ドル=80円を超えていた円の対ドル相場は2013年末に一時、105円台まで下落しました。

放っておけば、ドル建てで見た日本国債の値打ちはどんどん下がってしまいます。

人民元相場はドルとほぼ連動しています。

中国が外貨準備の価値を守るために、売り急いだとしてもおかしくはありません。

実際、2013年には市場で中長期の日本国債を約2兆4千億円も売り越しました。

しかし、視点を短期に移すと見え方が変わります。

中国は同じ時期に、期限が1年に満たない日本国債を約2兆円買い越しました。

中長期で売って、短期で買っているのです。

両者をひっくるめれば、中国が2013年に売り越した日本国債の額は4千億円にとどまります。

奇妙なのは売越額がこれだけなのに、残高は一気に6兆円超も減ったことです。

市場の外で何らかの操作をしたとしか思えません。

国際金融筋からは次のような会話が聞こえます。

「中国は日本国債を見かけほど減らしていない。一部は他国の名義で持っている可能性が高い」

実はルクセンブルクが、ものすごい勢いで日本国債を増やしています。

2013年末の保有額は前年より5割近く多い12兆円。

またたく間にイギリスやアメリカを抜き、中国に次ぐ2位に躍り出ました。

規制のゆるいルクセンブルクでは、本当の身分を表に出さないで金融機関に資金の運用を任せやすいといわれます。

「ルクセンブルクにある日本国債のかなりの部分は、本当の持ち主が中国なのではないか」

そんなうわさが絶えません。

事実とすれば、狙いの1つは「国内の世論に配慮した」というものです。

「中国は日本と沖縄県の尖閣諸島や歴史認識をめぐって激しく対立しているのに、虎の子の外貨準備で日本の借金を穴埋めするなんてとんでもない」

当局は日本国債を持ちすぎて、そんな批判が起こるのを恐れているという見方です。

日本と軍事的にぶつかった場合に備えているとの説もあります。

そこまで事態が悪化すれば、日本政府は中国の資産を差し押さえるかもしれません。

最悪のケースを念頭に、中国は自分名義の日本国債を減らしている、と勘繰る声が聞かれます。

一方で日本国債の大量保有は、中国にとって日本に圧力をかける道具にもなり得ます。

「売却」をちらつかせるだけで日本国債が値下がりし、長期金利が急に上がりかねないからです。

2010年に尖閣沖で中国漁船の衝突事件が起きたときは、逆に「日本国債を買い増し、円高に誘導すべきだ」という強硬論が公然と出ました。

日本経済の混乱は中国にも跳ね返ります。

いずれも普通は取りえない選択肢ですが、政治と経済がこれまで以上に一体化する中国では、絶対にないとも言い切れません。

中国の経済政策は共産党の「中央財経指導小組」が最後に決めるとされています。

李克強首相とみられていたこの組織のトップは、習近平国家主席であることが最近になってわかってきました。

外貨準備の運用も、これから一段と政治の意思を映すようになるとの臆測がくすぶります。

国際社会で自己主張を強める中国。

拡大する軍事力だけでなく、巨大な外貨準備の行方にも注意を払う必要があります。