異次元緩和が1年経過。国債の取引が低迷し長期債は2割減だが黒田日銀総裁は強気

黒田日銀総裁
日銀が国債を大量に買い入れる「異次元の金融緩和」を導入してから4月4日で丸1年が経過し、国債の取引の落ち込みが一段と鮮明になってきました。




2013年度の長期国債の売買高は前年度に比べ2割前後減り、同じ条件で比べられる1999年度以降で最も低くなる見通しです。

異次元緩和はデフレ脱却に寄与してきた半面、市場で売買できる国債を減らし、少量の取引で金利が乱高下するリスクを高めつつあります。

長期国債

長期国債の売買高は日本証券業協会がまとめた国債の店頭売買高から資金調達のために取引された分を差し引きました。

昨年4月から今年2月までの売買高は639兆円と前年同期比で18%少なくなりました。

2013年度通期では過去最低だった2009年度(782兆円)を下回る見通しです。

国債全体の売買高も7年ぶりの低水準になる公算が大きくなりました。

日銀は市場で国債を大量に買い入れています。

金利を低く抑え、設備投資やリスク資産への投資を後押しする狙いがあります。

こうした緩和策で物価が上昇に転じる半面、日銀が保有する国債は急増しました。

日銀の保有残高は昨年末時点で183兆円と1年前に比べ約6割増え、国債の発行残高のうち日銀は19%を占めます。

昨年4月以降に新しく発行した長期国債では、日銀が5割超を保有する銘柄もあります。

日銀の保有拡大で取引を仲介する証券会社の保有分は減りました。

そのため「100億円規模の大口取引がやりにくい」(資産運用会社)との声があがるほか、金利の動きが不安定になるとの懸念がくすぶります。

日銀は3月中旬、満期までの期間が10年超の国債の買い入れ額を1700億円と市場予想に反して100億円減らしました。

直後に債券先物の価格は需給の悪化を懸念して急落。

長期金利も一時、1カ月半ぶりの高水準に上昇しました。

「日銀の緩和で売買が少ないなか、売りが急に膨らんだのが主因」というのが市場関係者の見方です。

金利が乱高下すると企業が投資したり消費者が自動車ローンを組んだりするのにお得な時期を見極めにくく、投資や消費が手控えられやすくなりますので、国債を管理する財務省は対応を急いでいます。

同じ銘柄を市場の需要に応じて再発行できる「流動性供給入札」を4月から拡充しました。

再発行できる時期を、最初に発行してから最短で1カ月後としました。

従来は4カ月後でした。

流動性供給入札の発行額を2014年度に8兆4000億円と1兆2000億円拡大して、より多くの投資家のニーズに応えやすい体制を整えています。

日銀は、消費税の引き上げが景気に悪影響を及ぼすとの懸念をよそに、1年前に始めた大規模な金融緩和は2%の物価目標を達成できる軌道にあり、来週の金融政策決定会合で追加策を実施する必要はないと強気の姿勢を維持しています。

日銀が4月1日に発表した企業短期経済観測調査(短観)では、大企業から中小企業まで全ての企業が景気の先行きに警戒を強めていることが明らかになりました。

それでも日銀は、労働市場の改善や大企業による賃上げ、インフレ期待の上昇といった要因が、2015年春までに2%の物価目標を達成するという取り組みを後押しするとみています。

多くの民間エコノミストが予想する通り、日銀が消費増税の影響に対処するため追加策の実施を余儀なくされるとしても、来週の金融政策決定会合ではそうした決定を下す時期として早すぎます。

日銀の政策に詳しい関係者は「消費増税の影響をみるには、早くても4月下旬の会合からだろう」とし、消費税率の5%から8%への引き上げが始まってから1週間しかたっていない状況では情報が少なすぎると指摘しています。

日銀は4月30日にも金融政策決定会合を開きます。

4月と10月は金融政策決定会合が2回開かれ、両月とも2回目の会合で半期に1度の経済・物価見通しが発表されます。

4月7日・8日の金融政策決定会合では、増税前に自動車や家電などの高額商品に対する需要がどの程度前倒しされ、その反動が1-3月期にどの程度出るかが議論される見通しです。

この会合は、日銀が15年間に及ぶデフレからの脱却を目指し、国債の大規模買い入れという大胆な措置を打ち出してから1年という節目とも重なります。

異次元緩和という「バズーカ砲」は、1発発射されただけで物価を押し上げることに成功し、日銀に追加策の継続実施を求める政治的な圧力を封じ込めることができました。

前任の白川方明総裁は小出しの政策を繰り返す手法をとっていましたが、黒田総裁はこれを劇的に転換させました。

米エール大学の名誉教授で、安倍晋三首相の経済政策ブレーンの1人である浜田宏一氏は、黒田総裁の手法を野球のピッチャーに例えました。

浜田氏はウォール・ストリート・ジャーナルに対し、「どちらかというと、カーブボールで市場を幻惑し、うまくやろうとすることがない。直球を投げ込む。一度決心すれば、金融政策をきちんと固め、その効果を静かに見る。どちらかというと速球型」と述べました。

黒田総裁は、細かい点や微妙な変化にはあまり興味がなく、追加策について聞かれても常に、あえて強気を維持し、市場に同じメッセージを送るよう心がけています。

このため、市場参加者は黒田総裁の発言内容から追加策を期待しづらくなりました。

黒田総裁は、2年程度で2%を達成することに自信を持っているため、追加緩和は必要ないと思っているのではないでしょうか。

2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で1.3%上昇しました。

黒田総裁が就任した1年前のCPI上昇率がマイナスだったことを考えますと、これは特筆すべき成果と言えます。

もっとも、足元では物価上昇が一服しているため、上昇率は3カ月連続で横ばいとなりました。

日銀はCPIについて、夏の終わりまで現在の水準近くにとどまり、その後は2%の目標に向けて再び上昇すると見込んでいます。

しかし、エコノミストの多くは、円安による物価押し上げ効果が薄れ、そのころまでにCPIは低下に転じるか、横ばいで推移すると予想しています。

おそらく、勝負は2014年後半に訪れるでしょう。

民間エコノミストの見方が正しければ、日銀は追加策を避けて通れなくなります。

夏が終わった段階でCPIが低下していれば、日銀が2015年春までに2%の物価目標を達成できないことは明白だからです。

エコノミストの間では、増税で景気にどれほどの悪影響が出たかを示すハードデータの得られる7-9月期に日銀は追加策を講じるとの見方が大勢ですが、どのタイミングで実施されるかについては意見がますます割れています。

日銀は、円安の物価押し上げ効果が徐々に弱まる見通しだと認めながらも、労働需給の引き締まりやインフレマインドの出現がデフレに逆戻りする事態を防ぐとの見方を示しています。

「数カ月以内にCPI(前年比上昇率)が1%を割るこことはない。むしろ若干上がる可能性すらある」と主張する関係者も存在します。


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