日銀による国債買い入れが限界に近づきつつあり資本逃避リスクも

日本国債
ゴールドマン・サックス、メリルリンチに勤務後、ソシエテジェネラル東京支店チーフエコノミストを経て、2012年9月にジャパンマクロアドバイザーズを設立した大久保琢史氏は、ロイターの取材に応じ、黒田日銀の異次元緩和策を従来の日銀になかった積極的な政策として、一定の評価を示しました。




一方で、国債発行総額に占める日銀の保有シェアが、2020年末に約50%に膨らむとの試算を示し、今後は財政ファイナンスを意識せざるを得ず、国債買い入れが限界に近づきつつあると指摘しました。

そのうえで日銀とともに、国債消化を支えてきた国内生保もALM(資産・負債の総合管理)対応による国債買い需要が約2年後には、ほぼ終了するとして、円滑な国債消化に支障を来たしかねないと表明。

将来の悪いインフレ懸念に対して、資産を国内から海外にシフトさせる資本逃避(キャピタルフライト)のリスクを考える時期にきているとの認識を示しました。

インタビュー内容は以下の通りです。

 ――黒田日銀の1年間をどう評価するか。

当初、2%の物価目標に違和感があったが、為替の円安方向が維持されており、日銀の積極的な政策運営は基本的に成功を収めつつある。

この1年間を振り返ると80点の評価。

黒田総裁は、金融政策でインフレをコントロールし、日銀自身の責任でデフレ脱却を実現する政策を打ち出したことは、ポジティブに評価していい。

今までの日銀になかったことだ。

従来から消極的な政策への批判が多かった海外投資家からも、日銀がようやく正しい金融政策を始めたという声が多い。

 ――消費増税の影響と追加緩和について

異次元緩和政策の目的としてデフレ脱却が非常に重要。

デフレ脱却が実現できなければ、日本財政も再建できない。

インフレ期待を削ぐことになりかねない消費増税は拙速。

2015年10月に予定されている8%から10%への再増税をキャンセルすることも選択肢の1つだ。

4月の消費増税によって4─6月期GDPは相当落ち込むだろう。

7─9月期はリバウンドするかもしれないが、2014年度はプラス0.4%、再増税が予定される2015年度はマイナス0.1%を見込む。

日銀は景気先行きを見通した上で、早ければ6月にも追加緩和を行うとみている。

 ――異次元緩和の副作用は。

日銀が国債残高を年間約50兆円ペースで積み増している結果、国債発行残高に占める日銀のシェアが高まっている。

日銀の国債シェア(金額ベース)は、2013年12月末に19.3%と同年3月末(13.0%)から増加。

JMAの推計によると、2014年末に24.7%、2015年末に29.1%と30%に迫る見通し。

保有国債のデュレーションも長期化している。

現在のハイペースで買い続けると、日銀の国債シェアは2020年ごろに50%に達する計算。

さすがに、中央銀行が自国の国債を半分保有する姿は、明らかに財政維持の可能性に疑問符が付く。

欧州中央銀行(ECB)のように、コミットメントメカニズムを活用して市場の信頼感を得る手法を採用した方が、実弾(国債買入)をここまで使わなくても済んだのではないか。

 ──日本国債の投資リスクをどう考えるか。

日銀のシェア拡大によって、中長期的に国債の信認が崩れるリスクを考えておくべきだ。

そのリスクは、ずばり2年後ぐらいから意識され始めるだろう。

シェアが30%に迫れば、日銀としても『次の一手』を出しにくくなる。

確実な国債の買い手として、日銀の存在が危うくなる。

日銀とともに年々発行が膨らむ国債の消化を支えてきた生保も、ALM(資産・負債の総合管理)とのマッチングを狙った国債買いがあと2年程度で終了する見込み。

日銀と生保の買い余力低下に対して、新たな買い手が見つからなければ、国債価格は下落(金利は上昇)するだろう。

2年後は、米連邦準備理事会(FRB)がすでに利上げを始めている可能性が高い。

海外金利が魅力的な水準であれば、日本国民が資産を海外に移す動きがあっても不思議ではない。

保有資産の大半を円に傾斜している現状は歪(いびつ)に映る。

将来の悪いインフレ懸念によって資本逃避(キャピタルフライト)が生じるリスクを考える局面が来ているのではないか。


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