年金財政を改善するには支給開始年齢の引き上げは避けられない

国民年金
年金財政を立て直すには、結局、支給する年金の原資となる積立金を増やすか、もしくは給付を抑えるかの2つに1つしかありません。




積立金を増やす手っ取り早い方法は、保険料を引き上げることです。

しかし、国民年金の保険料と厚生年金の保険料率は2017年以降、固定されることが2004年の年金関連法改正で決まっています。

そもそも、保険料を固定したのは、これまで年金財政が悪化するたびに保険料を引き上げてきた従来の改正の仕方を廃止して、年金不信を払拭するためでした。

マクロ経済スライドなどの仕組みも、保険料固定を前提にしています。

以前のように保険料を引き上げる仕組みに戻すとは考えにくいです。

また、保険料の引き上げは、今、保険料を払っている人だけが痛みを伴うもので、現在の受給者との格差が広がります。

もう1つの方法は、日本経済を成長させ、運用利回りなどの経済条件を好転させて積立金を厚くすることです。

しかし、これについては達成への壁が高いといえます。

なぜなら、人口が減っていく国で高い経済成長率を維持するには、生産性をよほど高めなければならず、そのための策が必要だからです。

ならば移民を受け入れて人口を増やすのはどうでしょうか。

すぐに実行に移すのは非現実的でしょう。

日本では、まだ移民を受け入れるべきかの議論が十分なされていませんし、たとえ受け入れることを決めたとしても、規模の問題や移民の社会保障をどうするかなど、解決すべき課題が多すぎます。

積立金を増やす2つの方法(保険料率アップ、日本経済の成長)は、どちらも難しそうです。

ならば給付抑制の選択肢に目を転じてみましょう。

まずは現在、政府が保証している所得代替率50%の要件を撤廃するのはどうでしょうか。

こちらも、政府は2004年に年金関連法で「約束」しています。

「やっぱりダメでした」とすぐに白旗を上げるとは考えにくいです。

残る方法は1つ。

支給開始年齢の引き上げによる給付総額の抑制です。

こちらは現実味があります。

実は、現在進んでいる年金改革は、まさに支給開始年齢に焦点が当てられようとしています。

今年8月、内閣に設置された「社会保障制度改革国民会議」(以下、国民会議)は、報告書を取りまとめました。

その中では支給開始年齢の引き上げを「中長期の検討課題」としました。

ただし、具体的な開始年齢などについては議論せず、先送りしました。

国民会議でもう1つ、大きな検討課題として挙げられたのは、導入を決定したにもかかわらず、2009年以降一度も発動しなかったマクロ経済スライドの扱いです。

マクロ経済スライドが発動しないと給付抑制が進まず、積立金の取り崩しが進んでいきます。

それを食い止めるためには、現在のようなデフレ状況下でもマクロ経済スライドが発動する策を出さなければなりません。

2014年の財政検証を受けて検討すべき年金改革の主な課題は既に出揃っています。

日本総合研究所の西沢和彦研究員も「改革についてすべきことは、はっきりしている。あとは政治がどう考えるかだ」と話します。

懸念されるのは安倍晋三政権が何もせずに問題を先送りするリスクです。

給付抑制に対しては、高齢者を中心に大きな反発が出ることは間違いありません。

しかし、今ここで痛みを伴う改革を行わなければ、状況は悪化し、将来世代へのツケは膨らむばかりです。

来年の財政検証は、年金財政に注目が集まる5年に1度のイベントで、年金制度の在り方について議論を深める好機とも言えます。

この機会に安倍政権が現実を直視し、改革に向けてイニシアチブを取ることが、健全化への第一歩でしょう。

年金用語解説

所得代替率

将来受け取る年金の給付水準が、現役時代の平均収入の何割になるかを示す指標です。

政府は会社員と専業主婦の「モデル世帯」を例に、その夫婦の65歳時点での給付額を示しています。

足元の所得代替率は6割程度ですが、政府はこれを今後50.2%まで下げることが決まっています。

標準報酬月額

厚生年金保険料算定の基となる給与の額です。

30等級に分かれており給与水準によって振り分けられます。

上限は62万円となっています。

毎年の標準報酬月額は、4~6月の3ヵ月の給料を基に計算されます。

これには残業代なども含まれるため、この期間の給料が高くなると保険料も高くなります。

財政検証

2004年の年金制度改正により導入されました。

年金財政の健全化を図るうえで、将来の被保険者や受給者の割合、経済状況の変化を考慮し、給付と負担の将来見通しを見直すもので5年に1度実施される年金財政の「健康診断」です。

前回は2009年に実施され、次回は来年2014年に行われます。

平均余命

平均寿命の延びにより年金の支給期間は長くなっていることも、支給開始年齢引き上げを検討する大きな理由です。

2012年の65歳時点での平均余命(平均寿命まで生きる期間)は男性が18.89年で女性が23.82年です。

これが2060年には男性が22.33年、女性が27.72年になるとの推計が出ています。


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