私たちは正解を求める教育を長い期間受けてきました。
そのためか、表現力を使うときも、正しい答えがあるという前提で「うまくできているか?」をとても気にする人がいます。
立て板に水のごとくうまく話せる人の話が、聴き手に伝わっているかどうかは別問題です。
むしろ「話がうまいなぁ」で終わる可能性が高い。

伝えるときに最も重要なのは、ハートに伝わったかどうか。

伝えたいメッセージがあって、伝えたい想いがあるときは、うまい話し方をするよりも、心を込めて話せばいいのです。
テクニックで発する言葉は「舌が言う」と書く「話す」になり、口先だけのスピーチになります。
自分の体験を自分の言葉で伝えたときには「吾が言う」と書く「語る」になります。

あなたは口先で話す人か? 心で語る人か?

伝える力と伝わる力は違います。
たとえばアナウンサーは「正確に伝える」ことが仕事ですから「伝える力」が職業上必要な能力になります。
では、俳優がセリフを覚えて「正確に伝える」ことができれば、観客が感動し、ヒット作が生まれるでしょうか? そうとは限りません。

俳優は観客の「心に伝わる」ことが本来の仕事。
極端にいえば、多少セリフを忘れたとしても、その個性とハートで伝わってしまう役者はいるし、自分の持ち味と個性を活かして活躍すれば、味のある役者と呼ばれ、人気が出たりします。
ビジネスでは、内容と目的によっては「正確に伝えればOK」の場合もありますが、大半は「伝わる力」が高いほうに優位性があります。

情報過多の時代に、この違いを知らないと、一生懸命「正確に」伝えても、簡単にスルーされてしまうという悲劇が起こります。
コストや労力や時間をかけて伝えたものが、まったく伝わらず無駄になるとは、なんともったいないことでしょうか。

世阿弥が言った「花は観手に咲く」の意味は、どんなに正確にうまく伝えたとしても、相手に届くとは限らないという意味でもあります。
人間は感情の生き物であるといわれるように、頭ではなく心が動いて、初めて行動につながります。

伝えたいメッセージ、伝えたい想いがあるときは、うまい話し方をするよりも、心を込めて話せばいいのです。

心で感じて動く「感動」という言葉があるが、
頭で知って動く「知動」という言葉はない。