モノが少なく、品質にバラツキがあり、情報が一部の人たちのものでしかなかった20世紀という時代には、成功者は例外なく「人を動かす力(説得力)」に抜きん出ていました。
21世紀になると、モノは豊かに供給され、品質のバラツキは少なくなり、インターネット上には膨大な量の情報が飛び交っています。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、世界の情報量は、毎年2倍になっているそうです。
総務省の調査結果、世の中に出回っている全ての情報(流通情報量)の中で、実際に伝わっているであろう情報(消費情報量)の割合は、0.004%と明らかになっています。99.996%の情報がスルーされているということです。
では、どうすれば、人の心を動かす表現力を使えるようになるのでしょうか?
優れたビジネスコミュニケーションは、一流の舞台に似ています。
- 伝えたいことを時間内にドラマティックに伝える。
- もっと話を聞いていたい、この場にいたいと思わせる。
- 聴き手の心が動かされる。
- その場に一体感が生まれる。
- いい余韻が残る。
プレゼンテーションも商談も、日常のコミュニケーションも、人に価値を伝えるために最も大切なものは、テクニックではなくハートなのです。
売り込み、説得されて、モノを買いたい人はいません。
欲しければ並んでも買いますし、欲しくなければタダでもいりません。
人を動かすには2つのアプローチがあります。
操作する(コントロールする)か、インスパイアする(感動させる)か。
私は納得して買いたいと思いますが、説得されて買いたいとは絶対に思いません。
ステルスマーケティング(通称ステマ)のような、相手に気づかれない操作もありますが、SNSやスマホがインフラとして定着し、情報の透明化が進んだ現在の環境では「裏の仕掛け」が見えやすくなっています。
その結果、自分が操作されていたことに気づき憤慨する人は、かつてないほど多くなっています。
おまけに、情報化社会は拡散のスピードが速く、テクニックの賞味期限が、恐ろしいほど短くなっています。
すぐに役に立つテクニックは、すぐに役に立たなくなるテクニックでもあるのです。
テクニックで操作されて動きたい人は少ないはずですし、インスパイアされて動きたい人は大勢います。
人と人のコミュニケーションでは、共鳴したものが伝わるというのが原則です。
そもそもコミュニケーションの語源は「共有する」ですから。
情報が頭に届いた程度では、あっという間に忘れますが、心に伝わった言葉や情報は記憶に残ります。
情報の透明化が進む世界では「裏が見えると信頼を失うもの」と「裏が見えると信頼が増すもの」に分かれていきます。
もうそろそろ、20世紀の遺物のような操作系テクニックを覚えるエネルギーと時間を、人間力と表現力を高める方向へ使い、心の時代のマインドセットへシフトしましょう。
エゴで人を動かすか?
心で人を動かすか?