各種の職場環境での上下関係を対象とする最近の調査によれば、職場の人間関係の親密度は3レベルに分けられるといいます。

「ラポールレベル」「相互利益レベル」「信頼レベル」です。

一番親密度が低いのが、互いの「表面的な類似性」の上に成り立つ人間関係です。

この場合の類似性は性別、共通の経験、共通の履歴、同じ所属集団などです。

こういう類似性をキッカケにして互いに打ち解け合い、ラポールを築きます。

仕事でそれ以上の人間関係が必要なければ、いつまで経ってもラポールレベルの友好関係に留まることもあります。

ラポールレベルの人間関係が上手くいくかどうかは、相手の顔を覚える、ドアを押さえるといった ちょっとした対人シグナルで決まることも多いです。

よく知らない相手に些細(ささい)な不作法を働いた結果が高くつくこともある反面、ささやかな親切が何年も相手の記憶に残ることもあります。

第一印象やステレオタイプの段階を通り過ぎて、相手の実際の行動を観察する段階に移るのが、「相互利益レベル」の人間関係です。

共同で仕事に取り組むうち、相手の頼りがい、誠実さ、能力などが分かってきます。

すると、知り合った最初の頃に目を引いた表面的な特徴は背後に退き、お互いの行動が前面に出て、それが相手についての判断や評価のベースとなります。

仕事上の人間関係の中で一番親密度が高いのが、3つ目の「信頼レベル」の人間関係です。

信頼レベルの人間関係は、お互いについて十分な情報を集め、個人的にやりとりし、相手個人の人間性や動機や気質についての評価が固まって初めて生まれます。

信頼レベルの人間関係にある人同志は、もう相手に対して自分を証明する必要もありません。

それどころか、互いに「疑わしきは罰せず」のルールを適用することが多いです。

したがって、たとえ相手が期待通りの成果を上げなくても、信頼関係は簡単には壊れません。

約束を果たせなかった場合、相互利益レベルの関係なら崩壊するでしょうが、互いに心から信頼し合っている関係の場合は約束不履行も許される可能性が高いです。

信頼レベルのビジネス関係と、純粋な個人的友情の区別は難しいですし、そこをテーマにした研究も見当たりません。

ここでは、必ずしも厳選した親友リストに相手を載せなくても、信頼レベルのビジネス関係を築くことはできるとだけ言っておきましょう。

信頼レベルの仕事関係を私生活に持ち込んでもいいと思うかどうかの許容の幅は、おそらく人によって違うでしょう。

つまるところアイデア売り込みが成功するかどうかは、相手と人間関係を築き、維持し、深めることができるかどうかに始まり、それに終わると言っていいと思います。

初対面ではラポールレベルの関係づくりのスキルが欠かせません。

ネットワークを動員して情報や第三者へのアクセスを得ようとする場合は、相互利益レベルの関係が大きく物を言います。

そして最大の難所が訪れたとき、つまりアイデアをめぐる対立や実施をめぐる問題が生じたときに壁を乗り越えるには、信頼レベルの関係が必要です。

したがってアイデア売り込み戦略を立てるときは、説得したい個々の相手と自分との人間関係がどのくらいのレベルかを考えること。

そして戦略を発動する前に、あらゆる手段を使って それらの人間関係を改善しておくこと。

既に誰かと相互利益レベルや信頼レベルの関係にあるなら、それは新たな人間関係への扉を開く最高の足がかりになるはずです。

そして説得プロセスが進行するにつれ、新たに開拓したラポールレベル関係の中から、相互利益レベルや信頼レベルの関係へと深まっていくものも出てくるでしょう。