同僚にアイデアを売り込むのは、一般のセールスとはだいぶ勝手が違います。

しかし人間関係の観点から見れば、共通点がいくつかあります。

第1に「親近感」、つまり実際に顔を合わせる時間の長さが物を言います。

一緒に仕事をすればするほど、相手はあなたへの親近感を強め、それが良好な人間関係のベースになります。

好意的反応を引き起こす第2の引き金は「類似性」です。

シカゴ大学が生命保険の外交員を対象に行なった調査によれば、セールスの成功に繋がる最大の要因は商品知識でも、保険の必要度でも、外交員の話の上手さでもなく、外交員が顧客候補との間に共通の意見、経歴、嗜好、所属団体、ライフスタイルなどを発見し、それに基づいて相手との強いラポールを築けるかどうかだといいます。

親近感も類似性も、そして そこから生まれる好意も、過大評価してはいけません。

オフィスが隣同士だからとか大学が同窓だからというだけの理由で、リスクの高いアイデアを買ってくれる人はそうそういないでしょう。

それだけではありません。

アイデアそのものは大したことがないだろうと思われる可能性が高いです。

社交は上手いが中身のない人間もこれと同じです。

かといってラポールを疎(おろそ)かにすると、説得を阻む無用の壁をつくってしまうことになります。

【教訓】

類似性や好意を利用して、相手と良い関係を作るのを習慣にすること。

良い関係を作らなくても特に困らない場合は、なおさら関係作りを心がけましょう。

また、自分のエゴにかまけて相手を無視しないこと。

説得を阻む無用な壁をつくる結果になります。

良好な人間関係の3つ目の、上記の2つとは無関係な基盤が「相互利益」です。

一口に仕事上の人間関係といっても様々で、親しさの度合いもいろいろです。

ある程度の礼儀正しい関係とラポールを築き上げ維持することさえ出来れば、個人的には さほど好意を持っていない相手とでも、相互利益に基づく円滑な仕事上の人間関係を作ることができます。

事実、純粋な個人的好意に基づく人間関係においてより、むしろアイデア売り込み過程においての方が、相互利益が一貫して大切な役割を果たすと言えるでしょう。

職探しをする場合、求人広告や親しい友人や家族を通じて職を見つけるより、相互利益に基づく比較的弱い人間関係から成る緩(ゆる)いネットワークを通じて職を見つけることの方が多いようです。

中国では、相互利益に基づくネットワークは「関係(グワンシー:コネのこと)」と呼ばれ、貴重な財産とされています。

相互利益のルール(返報性とも言う)は、人間社会で最も強固な社会心理学的規範のひとつです。

簡単に言えば、「人は誰かに何かをしてもらったら、お返しに自分も何かをしてやることが多い」ということです。

相互利益は交渉のテーブルでも見られます。

両者が代(か)わる代(が)わる譲歩したり、情報交換をしたりします。

アイデア売り込みにおいては、「相互利益に基づく人間関係」という形で一役買う場合が多いです。

社内政治の研究では、「好意銀行(favor bank)」という言葉まであります。

誰かに何かをしてやったら、自分のソーシャルネットワーク内に「好意」の貯金ができ、自分に都合の良いときに お返しを求めることができる、というものです。

資金、サービス、精神的支援、地位、情報などをやりとりするのも相互利益です。