世界的な高齢化は米国のGDP成長率を阻害する可能性がある

高齢化
米国勢調査局は最近、米国への純移民数の減少と予想を下回る出生率を要因として、米国の人口増加率予想を2008年の報告書の水準から大幅に引き下げました。




米国の労働年齢人口(18~64歳)は、1970年代には年率1.81%増加していましたが、2020年までは年率0.36%増、2020年から2030年では年率0.18%増と予想されています。

1970年代にはベビーブーマーが労働年齢人口の増加に貢献しましたが、彼らは今や大量に退職の時期を迎えていて、社会保障費を労働者に頼らざるを得なくなっています。

非農業部門の労働生産性の過去3年間の伸び率は年率わずか0.7%でした。

ちなみに労働生産性は、第二次大戦後は国内総生産(GDP)を年率2.3%押し上げていて、2005年までの10年間ではインターネットや電子商取引にも支えられて年率2.9%上昇しました。

現在までのところ、スマートフォンやタブレットといった携帯機器やソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の爆発的な普及は生産性に寄与していません。

労働生産性の伸びの減速の要因として、研究開発の動向が考えられます。

民間の研究開発費の伸びは、1980年~2000年にかけての年率4.7%から過去10年間で2.8%へ低下し、政府の研究支出は過去数年間で減少傾向です。

ハイテク製品における技術革新の欠如によって、企業のIT投資意欲は1990年代より低下しています。

ノースウェスタン大学のエコノミストであり全米経済研究所の一員でもあったロバート・ゴードン氏は、2012年から2032年の米国の年平均経済成長率を1.9%と予想しています。

ただし、所得の不平等や負担の大きい債務水準などによって、「米国人の99%は経済成長の恩恵を受けられないため」、1.9%未満の経済成長率もあり得ると同氏は付け加えています。

JPモルガンのエコノミストは、今後5年間の経済成長率を1.75%と予想しています。

ムーディーズのエコノミストのマーク・ザンディ氏は、人的資源とその技能の不足に直面する企業は、より自由な移民政策を求めるだろうと考えています。

とはいえ、2022年から2032年にかけての経済成長率予想を年率2%から同1.8%へ下方修正しました。

世界全体の高齢化によって、米国のジレンマは一段と厳しくなっています。

日本の退職者人口の割合が着実に上昇していることは周知で、国連人口部は2015年には26%、2025年には29%に増加すると予想しています。

日本の高齢化は、1990年代からの経済成長の欠如と同じ考え方ができます。

一方で、香港の65歳以上の人口比率が2015年に15%、2025年に約22%に達すること、およびシンガポールでも2015年の11%から2015年に17%に上昇することはあまり知られていません。

さらに中国でさえ、65歳以上の人口比率は2015年の10%未満から2025年には14%弱へ上昇すると予想されています。

欧州ではドイツが既に20%を超えていて、2025年には25%へ上昇すると予想されている他、フランスでも同様の傾向にあります。

世界的な高齢化は海外需要を抑制させる傾向にあり、米国のGDP成長率に悪影響を与える可能性があります。

新興国は米国企業の利益にとって非常に重要でしたが、先進国と比べてセーフティネットの規模が小さいため、国内問題に対処するための支出を増やさざるを得ないでしょう。

GDP成長率は株式市場の毎年の上昇率とはあまり関係ないかもしれませんが、企業にとって売上高と利益の成長率を維持するのは困難になるでしょう。

自社株買い戻しと配当の原資確保も難しくなります。

株価はGDPの成長に応じて上昇し得ますが、そのペースは長期的にはGDP成長率に応じて調整されるでしょう。

景気後退や高失業率は、予期せぬ政策的な計算ミスによって慢性的になる可能性があります。

財政・金融政策は管理がより困難になり、ミスを許容する余地が小さくなるため、小幅の景気刺激策でさえ予期せぬインフレにつながる可能性があります。

米国の税収は悪影響を被り、社会保障やメディケア(高齢者向け医療保険制度)などに充てる資金の確保が一段と困難になるでしょう。

これらのプログラムの資金が予想以上に早く底を付くことを回避するためには、増税か給付削減に頼らざるを得なくなります。

GDPの成長が負債の増加に追いつけないため、負債のGDP比も上昇することが予想されます。

ベビーブーマーの退職の急増は、米国の労働生産性を脅かすだけではありません。

就業率も2006年の66.2%から今年8月の63.2%へと低下しています(米国労働局は就業率を、労働者数を16歳以上の全人口で割って求めています)。

25歳から54歳の就業率は2006年第4四半期の83%から2013年第3四半期の81%へと低下し、最も打撃を被っています。

若年層(16~24歳)は1988年の65%から2012年にはわずか46%へ、20歳以上の女性も2000年の58%から2012年には55%へ低下しました。

米国の全世帯の所得の中央値は、2006年の5万4892ドルから最近では5万1017ドルへ低下しました。

今後数十年間でこの傾向が悪化する可能性があります。

米国のマイノリティーの所得の中央値は、白人の所得の約60%程度にとどまっています。

つまり、ほとんどが白人であるベビーブーマーが引退して所得が少なくなるにつれて、米国人全体の所得の伸びが低下することになります。

65歳以上の人口の割合は今後20年間で13%から20%へ上昇すると予想される一方で、マイノリティーの割合は16%から2030年には22%弱、2050年には28%へ上昇すると予想されています。

所得の関係が維持されると想定すると、米国の所得の中央値は、2020年までは年率0.43%ポイント、その後10年間では年率0.52%ポイント低下することになります。

経済成長は労働年齢人口と労働生産性に依存していますが、いずれも経済成長の劇的な鈍化を示していることは、多くの政治家や有権者が理解していない事実です。


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