日銀は物価下振れなら国債の新規発行額全てを買い入れる可能性あり

日本国債
日銀は生鮮食品を除く消費者物価 (コアCPI、消費増税の影響を除く)の前年比が「2015年度までの見通し期間の後半にかけて2%程度に達する」としています。

こうした見通しが大きく下振れした場合、現在の長期国債の買い入れペースを一段と上回る大規模な購入を検討する構えです。




日銀内には、国債市場の規模は膨大であり、月間の新規発行額の10割(ようするに全部)を買い入れることも技術的には可能、との声も出ています。

一方、足元の景気・物価が見通し通りに推移していることから、日銀は当面、静観を続け、来年4月の消費税率引き上げ後の駆け込みの反動を見極める構えです。

日銀は現在、長期国債の保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買い入れていて、月間の買い入れ額は新規発行額の7割超に相当します。

長期国債保有額は来年末に190兆円に達する見通しです。

黒田東彦総裁は今年2月、総裁就任前に「日銀が買うことができる金融資産はいくらでもある」と言い切りました。

また、12月7日の講演では「日銀は中央銀行という公共主体として、物価の安定という法律で与えられたマンデート(委任された権限)に忠実な政策を行うべきだと強く思う」と述べました。

関係者によると、金融政策運営の実行部隊ではこうした思想が徹底しているのだそうです。

長期国債をさらに大規模に買い増す上で障害となり得るのは、日銀が財政赤字を穴埋めする「財政ファイナンス」との見方が強まり、長期金利が跳ね上がることです。

仮にそうした事態に陥れば、金融システムの不安定化につながったり、日銀のバランスシート肥大化により、大量買い入れの出口政策の時点で日銀が債務超過に陥るリスクがあります。

しかし、黒田総裁は4月の講演で「日銀による国債買い入れが増加する中、それが財政ファイナンスではないかといった議論をそもそも惹起(じゃっき=誘発)しないためにも、政府が今後の財政健全化に向けた道筋を明確にし、財政構造改革を着実に進めていくことは極めて重要」と述べ、財政規律の維持は基本的に政府の仕事だという姿勢を明確にしています。

黒田総裁はさらに、12月2日の講演で「金融システムや国際協調は、物価の安定に比べれば優先順位は低い」と言明しました。

バランスシートについても、中央銀行は「広い意味で政府の一部なので、政府の一部のバランスシートのことをいろいろと言ってみても、むしろ政府全体のバランスシートの方をよく考えなければならない」と述べ、いずれも2%の物価目標を追求する上で大きな障害にはならないとの見方を示しました。

一方、政策委員の間には、一段の長期国債の買い増しに慎重な向きもあり、大規模な長期国債の買い増しに踏み切る場合、複数の反対票が出る可能性もあります。

佐藤健裕審議委員は12月4日の講演で、追加緩和について「期待の転換を図るという点では逆効果となりかねない」と指摘しました。

講演後の会見では、仮に追加緩和を行っても、4月に打ち出した量的・質的金融緩和を上回る効果を得るのは難しいとの見方を示しました。

木内登英審議委員も9月20日の会見で「それなりの大きなショックでないと、効果・副作用のバランスから考えて、適切な措置ではない」と述べ、追加緩和に否定的な見方を示しました。

12月19日と20日の金融政策決定会合を前にエコノミスト35人を対象にブルームバーグ・ニュースが行った調査で、日銀が追加緩和に踏み切る場合の長期国債の買い入れ余地を尋ねたところ、「一段と増やせる」との回答は25人(71%)を占めました。

規模については「年間60兆~65兆円(月間8割)」が10人(29%)、「70兆円(9割)」が3人(9%)、「80兆円(10割)」が5人(14%)、「90兆円(10割超)」が1人(3%)、「回答なし」が6人(17%)でした。

東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「年間70兆円、新規発行額の9割」と回答する一方で、「日本経済が危機的な状況に直面するならば、さらなる『バズーカ砲』も検討対象になるが、物価を2%にするために安易に資産買い入れを増やすと、将来世代に深刻な不利益を及ぼすだろう」と指摘して長期国債の一段の買い増しは「やるべきではない」としています。

一方、足元では、景気・物価が日銀の想定通りに推移していることを受け、早期の追加緩和観測は後退しています。

ブルームバーグ・ニュースの調査では、追加緩和の時期は消費税率引き上げ後の「来年4月~
6月」との回答が13人(37%)と前回サーベイ(51%)から減少しました。

もっとも、日銀がコアCPI前年比が「2015年度までの見通し期間の後半にかけて2%程度に達する」としていることに対しては、引き続き懐疑的な見方が多いです。

岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは「主要国の物価上昇が高まらない中で、日本の物価が2%近辺に定着する可能性は低い」と指摘します。

黒田総裁は12月2日の講演で、来年4月の消費税率引き上げに伴い景気が失速するリスクは「それほど大きくない」とする一方で、「海外のリスクについては十分注意していかないといけない」と指摘。

「上下のリスクが顕在化した場合は、ちゅうちょなく政策の調整を行う」と強調しました。

白井さゆり審議委員も11月27日の講演で、経済・物価の下振れリスクが顕在化して見通しが大きく下振れした場合、「日銀の金融政策の信認にかかわるので、躊躇なく追加緩和すべきだ」と述べました。


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