異次元緩和政策の出口で日銀と政府の衝突は避けられない

日本国債
日本の国債市場は、財務省、証券会社、投資家(銀行、保険会社など)、そして日銀によって構成される「ムラ社会」です。




そこで膨大な国債発行量をこなしていくには、ボラティリティ(価格変動率)が低い状態を維持していく必要があります。

その均衡が黒田東彦日銀総裁の「バズーカ砲」によって壊されたのが今年春に生じた“騒乱”でした。

しかし、5月下旬以降は様相が異なっています。

国債市場のボラティリティ(価格変動率)が鎮まるにつれ、日銀の国債買い占め効果が需給(需要と供給)に表れるようになりました。

FRBの国債買い支え政策の時には、朝鮮戦争で資金需要が出てきた為、銀行業界も国債を買うのを嫌がりました。

しかし、今の日本では、企業や家計の資金の借り入れ需要が伸びないため、再び国債を買い始めた銀行も少なくありません。

また、この膨大な国債購入策は2015年以降も継続されるのではないか、という見方が増えてきたことも影響しました。

バーナンキFRB議長が5~7月にQE3の縮小を示唆したことで、米国だけでなく欧州でも長期金利は上昇しました。

しかし、日本はそれらとは逆に不気味な低下を見せました。

5月29日を基準に見た場合、ドイツの10年国債利回りは10月7日時点で0.28%高くなりました。

一方、日本は欧州に比べ、景気回復は日本のほうがしっかりとしているはずなのに、同じ期間に0.19%低下しました。

元日銀審議委員の水野温氏は10月3日のブルームバーグのインタビューで、日本の債券市場は「壊れた温度計」だと的確に指摘していました。

インフレ率を考慮した現在の実質長期金利は、マイナスの領域に入っていて、金融緩和効果は従来よりも強まっています。

しかし債券市場での売買額は激減していて、この政策が長期化すると参加者の減少によって市場機能は損なわれ、日銀が支えを外すことが益々難しくなる恐れが出てきます。

また、当局による操作で不自然に金利が抑え込まれているだけに、何らかのショックが加わるとボラティリティ(価格変動率)が再び激しく高まるケースも想定できます。

日銀は2015年にインフレ率が2%に達するまで、この異次元緩和政策を続けると4月に宣言しました。

「インフレが2%に達せずとも、景気が良くなっていれば1~2%でも十分だ」という考え方がいずれ世論の中で強まる可能性はあるでしょう。

ただし、それは「追加緩和策は、もうやらなくてよい」という流れは生んでも、「国債購入を止めてよい」という方向にはつながりにくいと思われます。

なぜなら、この異次元緩和政策を止めようとすると、これまでの心理的効果に逆流が生じ、円高・株安が起きる恐れがあるからです。

また、長期金利が上昇する可能性もあるため、政府はそう簡単には寛容になれないでしょう。

これは「ホテルカリフォルニア」的政策になる恐れがあります。

1970年代のイーグルスの歌のように、入ることはできてもチェックアウトは容易でありません。

それに逆らって国債購入を減らそうとしたら、FRBと政府との衝突が生じるでしょう。

1951年当時のFRBは最終的に「アコード」という形で国債価格維持政策からの離脱に成功しました。

しかし、FRBも深い傷を負いました。

FRB議長は大統領に事実上解任され、財務省から次期議長が乗り込んできました。

しかし、日銀もどこかで終わらせなければならないことは確かです。

今後、国債購入の減額に着手できるケースは、次の3パターン考えられます。

①財政再建が劇的に進んで、国債発行額が顕著に減少、それに合わせて日銀が国債購入額を減らせる。

②インフレ率がオーバーシュートし、3~4%へ行ってしまうと政治家も含め多くの人々が心配する。

③この政策の継続で日銀資産がとてつもなく膨張し、国内外から「そろそろ危ないのではないか」と懸念されるケース(またはそれに伴って円安が過度に行き過ぎて、インフレ率が②のようにオーバーシュートするケース)。

①と②は当面は起きにくそうです。

③のケースですが、仮に2015年以降も日銀が今のペースで国債保有額を増やし続けたら、2020年には日銀資産の規模は名目GDP比で100%を超えます。

そこまで行くと「国内の富裕層が不安を感じて資産逃避を起こすのではないか?」「東京オリンピック開催年まで現在の政策が続いたら、“オリンピックバブル”終了と一緒に危機的な状況が生まれるのではないか?」といった心配が湧いてきます。


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