機能性表示 規制緩和
サプリメントや健康食品(以下、サプリ、健食と略)の機能性表示に関しての規制緩和について安倍晋三首相は「目指すのは世界並みではなく、世界最先端」と語っています。

2013年6月、すでに閣議決定し、米国で1994年から導入された「ダイエタリーサプリメント制度」を参考にした新制度を導入する方向性が決まっています。

米国のダイエタリーサプリメント制度は1994年、医薬品とサプリの明確な区別、消費者のサプリ摂取の目的を明確化、サプリに対する知識と理解の促進、産業育成、医療費削減などの目的で始まりました。

この結果、米国ではサプリや健食産業が急成長しました。

日本ではこれまで「血圧が気になる方へ」「強い骨をつくる」などといった機能性の表示は、国が認可する特定保健用食品(トクホ)や栄養機能食品だけに認められていました。

規制緩和によって科学的な裏付けがあることを前提として、サプリや健食にも機能性の表示が認められるようになる計画です。

日本で販売するサプリや健食は機能性を表示できないため、消費者がその効果を正確に理解しないまま飲んでいたり、適切な量を服用できていなかったりしています。

機能性を示さないまま放置しておくのは消費者保護の観点から見てもよくありません。

何のために飲むのかをはっきり表示したほうがいいでしょう。

実際、日本ではトクホ市場の伸びよりも、機能性を表示できないサプリや健食の伸びのほうが大きく、今ではトクホ市場の2倍程度の1兆円規模になっています。

トクホは開発のためには3億円近い初期投資がかかるケースもあるために参入障壁が高く、商品のバラエティーさに欠け飲料中心になっています。

トクホに飽き足らない消費者がサプリや健食市場に流れている多いとも見られます。

トクホの大きな特徴は、何に効果があるか関与成分がはっきりしていることです。

サプリや健食も効果をうたう機能性を表示する以上は、この関与成分をはっきりするべきだとの指摘もあります。

これは医薬品に対する考え方に近いです。

医薬品である漢方薬の中には明確な有効成分が分かっていないものもありますが、「伝統」という裏付けが科学的証拠として見られています。

そもそもサプリや健食でもトクホと同様に関与成分を明確にする必要があるのかが、今後、規制緩和を推進していくうえで大きな争点となる可能性もあります。

薬とは違いますので、米国でもサプリや健食に効能はうたえません。

日本で新制度が発足してもこれは同じです。

そもそも薬とサプリ・健食は求められていることが違います。

薬はすぐに効くべき病気の治療や痛みの緩和などに用いられますが、サプリ・健食は主に長期的視点で体質改善に用いられるべきです。

こうしたサプリ・健食の中にも、関与成分は明確に分からなくても、疫学的な調査によって病気の予防につながるものがあることも分かっています。

疫学的な調査とは、地域の食生活などを分析して「○○を多く食べる地域は胃がんが少ない」といったデータを導き出すものです。

赤ワインなどに含まれるポリフェノールや、インディアンが「薬」代わりに使っていたとされるハーブの一種「エキナセア」は、疫学的に病気の予防に役立つことが判明しています。

人それぞれライフスタイル、受けるストレス、食生活が違いますので予防の研究は難しいチャレンジではあります。

ただし、古くから「医食同源」という言葉がありますように、食品(事)と病気の因果関係はあります。

だからこそ、疫学的な効果や論文などで科学的に裏付けがしっかり取れていたりするものを、消費者にしっかり説明したうえで、それを消費者が選択し、自身の健康の維持増進のために役立てていくのが、今回の規制緩和の本来の狙いでもあります。

また、機能性を書かせることによって、薬との飲みあわせの弊害なども明示できるようになれば、これも消費者にとっては安全性が高まることにつながります。

ところが日本の現状を見ますと、サプリや健食は厳しい規制によって機能性を表示できません。

法律違反ぎりぎりの「イメージ広告」が流行し、消費者に対して効果をはっきりと伝えられていないばかりか、誤解も生じさせています。

また、業界の中には、効果の疑わしいものを売る、いわゆる「悪徳業者」もいます。

現在、消費者庁で新制度を具体的にどのようなものにするか検討している段階です。

私の推測も入りますが、今回の規制緩和によって科学的な裏付けないものは、今までのイメージ広告は使えず、そうしたメーカーにとっては規制強化になるのかもしれません。

ただ、消費者の体に入る製品を造っている以上、これは当然の流れです。

製造工程での衛生管理や安全性などの品質保証管理といった消費者目線で必要な規制は強化され、それを守れない企業は業界から淘汰していくことも求められています。

これは「書かせない規制」から「書かせる規制」への移行を意味します。

すなわち、「書く」権利を得た以上、企業はそれに伴う責任も重くなるということです。

日本が「お手本」にしようとしている米国では20年前に新制度導入後、業界や消費者にどのようなメリットがあったのでしょうか。あるいは、混乱はなかったのでしょうか。

この点について、約300社が加盟する米国で最大のハーブの業界団体「アメリカン・ハーブ製品協会」のマイケル・マクガフィン会長は、次のように説明しています。

「米国にも悪徳企業はあるので、参入障壁が低くなったことでまったく混乱がなかったわけではありません。制度ができた当初、何は表示できて何ができないかを学ぶ時期でした。たとえば、グルコサミンだと『ひざの健康に良い』とは言えるが、『リウマチを治す』とは言えません。表示方法をどうするかを学びました。

問題が起こるたびに米国ではFDA(食品医薬品局)が規制を強化しました。たとえば、GMP(グッド・マニファクチャリング・プラクティス)と呼ばれる製造工程や品質の管理基準に準拠することを医薬品メーカーと同様にサプリ・健康メーカーに義務付けました。市販後、重篤な副作用があった場合にも報告を義務付け、違反すると厳しい罰則があります。業界としてもFDAの取り締まりに積極的に協力しました」

「こうした負の側面だけではなく、サプリや健食業界で5,000品目しかなかった商品が80,000品目にまで拡大し、業界全体の売上高は約7倍の3兆5000億円に増大し、消費者の選択肢が広がりました。売れる市場があるから企業が新商品を開発し、それが消費者の利点になるのです」

「このほかにも、昔から使われているエキナセアとかイチョウ葉エキスとか朝鮮ニンジンは、加工方法や調整方法が進歩して品質が高くなりました。市場が成長すると他国からウコンなどの新しい素材も持ち込まれ、それと最新の加工法がミックスして機能性が強くなった商品もあります。米国では規制緩和によって好循環が生じ、そこからイノベーションにつながっています」

米国では1994年に「ダイエタリーサプリメント制度」に関しての法律も新たに制定され、そこでは、企業は消費者を教育する義務があり、消費者は教育を受ける権利があることが明確化されています。

製品や成分についての効果、その根拠を教育する権利と義務があるというわけです。

インターネットの時代に合わせてWEB上でも積極的に情報開示をしなければなりません。

日本でも規制緩和によって消費者がメリットを享受し、同時に業界が健全に発展するためにも、米国の取り組みには学ぶ点も多いと言えるでしょう。

2014年4月24日、「機能性を標榜する健康食品の安全性及び品質の確保と管理」と題するシンポジウム(AIFNと在日米国商工会議所主催)が開催されました。

今回の規制緩和に絡み安全性の確保などについて専門家が見解を示しました。

そこで基調討論に参加した竹中平蔵・慶応大学教授は、「サプリや健食の機能性表示に関する規制緩和は、国民の健康増進と財政赤字対応という2つの課題を『市場』を通じて解決するものです」と例えました。

日本では毎年1兆円近く医療費が増大しています。

高齢化の進展によって、平均寿命と生き生きと生活できる『健康寿命』の間に10歳程度の開きが生じ、死を迎えるまで寝たきりで薬漬けとなる高齢者が増えていることも、国家財政を圧迫する要因となっています。

このため、医療や薬だけに頼るのではなく、サプリや健食を活用した「セルフケア」によって、自分の健康は自分で守り、死ぬまで生き生きと生活できることを求める時代が到来しようとしています。

そうした新しい時代に対応するための規制緩和とも言えるでしょう。