ドル/円が120円を超える円安となった場合、2014年度に経常赤字になる

経常赤字リスク
1月経常収支が4ヶ月連続の赤字となり、2013年度には現行統計で初めて赤字転落する可能性が出てきました。

同時に政府債務の国内ファイナンスが盤石とも言えないとの声が浮上しています。




麻生太郎副総理・財務相は3月11日の閣議後会見で1月の経常赤字が最大になったことについて「(貿易赤字を)補っているのが所得収支。所得収支はいま確実に伸びている」と述べ経常赤字は一時的との認識を示しました。

ただ、エネルギーの輸入価格が安く安定しなければ「今後も不安定要素を抱え続けることになる」とも指摘しました。

経常黒字に裏打ちされてきた国内貯蓄超過は、政府総債務残高が家計の純資産を間もなく上回る状況となり、怪しい雲行きとなってきました。

国内貯蓄の大半は高齢者が保有し、金利の急上昇は起こりにくいとされていますが、大幅な円安進行や、財政信認の崩壊に直面した場合、資産の海外流出が加速するリスクに注意を促すべきとの指摘も出ています。

今年1月が過去最大の経常赤字となり、2013年度に経常黒字を維持するには2月、3月合わせて1300億円強の黒字を確保する必要があります。

しかし、円安による輸入金額の上昇や消費増税前の内需拡大により、今後2ヶ月は経常黒字どころか、貿易赤字幅が拡大しそうなことを背景に、2013年度の経常赤字転落の現実度が増しています。

4月以降、消費の落ち込みを背景に輸入が減少し、市場関係者の間ではいったん経常収支は黒字に戻ると見通されています。

しかし、最盛期に年間10─20兆円規模だった経常黒字幅は、東日本震災以降は3─4兆円がせいぜいとなっています。

4月以降は駆け込み需要による輸入拡大という言い訳も通らなくなり、黒字幅縮小が続けば、経常赤字化リスクの高まりを否定できなくなります。

少なくとも貿易収支については、 今後もエネルギー輸入に加えて、高齢化による医薬品や医療機器といった値のかさむ輸入の増加が加わります。

一方で輸出は、自動車や電機といった空洞化が進む主要品目のすう勢的な減少傾向により、元に戻る見込みは大きくありません。

2015年以降については、高齢化・空洞化の進展による輸入数量のすう勢的増加と交易条件悪化傾向を背景に、経常黒字が構造的に縮小を続けることが予想されます。

さらにぜい弱性を抱えることになった経常収支の行方は、今後の外為市場次第で赤字化のリスクもはらむことになりそうです。

日本総研副理事長・湯元健治氏の試算では、ドル/円が120円を超える円安となった場合、2014年度にも経常赤字になるとしています。

経常黒字の縮小と赤字化リスクは、国債消化と金利上昇への不安につながりやすい要因でもあります。

財務省は3月10日の財政制度等審議会分科会で、懸念すべき事項として、財政赤字と経常赤字の「双子の赤字」に直面するリスクに言及。

国債消化への懸念材料になり得る点を指摘しました。

これまで巨額の財政赤字にもかかわらず、日本の長期金利が安定している背景には、国内の貯蓄超過の源泉となる経常黒字の存在や、家計の金融純資産が政府債務を上回っている状況がありました。

この点を根拠に国内債の大多数を保有している銀行やその他の投資家は、日本国債を投げ売りして来ませんでした。

しかし、家計の純資産は足元で1205兆円、一般政府総債務は1122兆円とその差はごくわずかまで縮小しました。

間もなく逆転することは確実な情勢です。

株価の上昇などで家計純資産が増加したとしても、高齢化による家計貯蓄率の基調的な低下は免れず、政府債務の増加の勢いは止まりそうになく、そう遠くない時期に政府総債務が家計の純資産残高を上回る事態に直面しそうです。

もっとも、経常赤字が続き、政府債務が家計金融資産を上回っても、財政への信認が毀損されない限り、直ちに金利が急上昇するというわけではないとの見方も根強くあります。

国債金利の急上昇がそう簡単に起こらないと見られている根拠として、家計の金融資産の6割を60歳以上の高齢者が占めていることが挙げられます。

その結果として安全志向が強まり、現預金や保険などの保有比率が8割を超え、海外シフトも起こりにくくなっています。

日本の高齢化が貿易赤字や家計金融資産の減少を招き、本来ならば上昇するはずの国債金利ですが、それを抑制しているのもまた、高齢者の貯蓄行動であるというわけです。

国際収支や国内ファイナンスの状況が悪化する中で、金利上昇へのカギを握るのは、やはり財政への信認が維持できるかどうかにかかっています。

経常赤字であっても、日本の成長性に対する期待が持て、財政の信認が保てるのであれば、海外からの資金を引き付け、国債の円滑な消化を続けることは可能ですが、逆に財政に対する信認が欠けた状態のまま経常収支の赤字が続けば、長期金利が上昇する可能性も出てきます。

経常赤字国に転じても、金融市場からの攻撃の対象にならないような頑健な経済基盤と財政再建への努力を継続することが重要です。

貿易赤字に伴う経常黒字縮小や、高齢化により家計の金融資産の減少傾向といった環境を変えることが難しいなら、財政への信認維持に取り組む努力、それに家計や企業の資産と、政府の負債とのバランスが悪化しないよう、財政改革に努めることが必要です。


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