顧客が商品の購入(行動)に至るプロセスを図式化すると次のようになります。

現在と未来のギャップ

縦軸は「幸福度」、横軸は「時間」です。人間の行動には、大前提があります。
それは、現在と未来のギャップが大きく広がるほどに、そのギャップを埋めるために、人はアクション(行動)を起こす、ということです。

たとえば・・・
現在、自分は不満である。
しかし、未来に自分は満足した状態になれると期待できる。
しかも、その可能性が極めて高いと知った。
そこで人は初めて行動を起こす。

もちろん、必ずしも現在が不満である必要はありません。
現在、幸福だと感じている場合でも、未来に「もっともっと幸福になる」と期待できる場合には、それもギャップが大きいので、行動を起こすことになります。

また現在、極端に不満と感じている人が、未来には元に戻れると期待できる場合も同じく、ギャップが大きいので行動を取ります。

一方、ギャップが十分ではない場合、人は現状維持を続けます。
「ゆでガエル」といった表現があるように、変化に気づかず、結局、ゆであがるまで、お湯から飛び出すことができません。

ですから、商品を説明するだけでは、顧客の心を動かすには不十分。
「ギャップ」を見せられないからです。

まずは、相手が置かれた状況を、相手の立場でじっくり考えます。
そして相手が心の中で、困ったと感じている「ギャップ」を見つけ出し、明確な言葉で表現します。

そこで初めて相手は、自分の問題(もしくは欲求)に気づき、外からの声に耳を傾けられるようになります。

では、問題を認識した際に、“真剣に耳を傾ける相手”とは、誰でしょうか?
それは、自分と同じような問題を経験し、乗り越えてきた人です。
そして、彼は、新しい世界への冒険へと誘(いざな)います。

主人公は、はじめは日常から離れることを躊躇するけれども、自らの決断により、狭き門をくぐり、新しい世界を体験し始める・・・といった具合です。

敏感な方は、既に感じ取られたかと思うのですが、「新・PASONAの法則」は、このように人が成長していく物語の形式と全く同じなのです。

つまり、売り手とは、商品がもたらす新しい世界を体験していただくことによって、買い手がヒーローになるように、導いていくメンターの役割を担っているのです。

物語の形式に沿うことで、売上が上がっていくのであれば、販売とは、決して「売り込み(セールスパーソン)」ではなく、「語り部(ストーリーテラー)」であることが分かるでしょう。

物語は、慣れ親しんだ日常が崩れてしまい、ヒーローが小さな門をくぐって、新しい世界へ冒険に出ます。

ひとつひとつの挑戦を体験するごとに力をつけたヒーローは、最後に自分自身に向かい合い、過去の思い込みの自分自身を打ち下して、再び元いた世界、しかし、新しく成長した世界に戻ります。つまり、バラバラに分離した世界が、再び統合に向かってひとつになっていくというプロセスを表現したものです。

論文を書くにあたっても、更には国の方針を打ち出すにあたっても、更には契約書の文案をつくるのにも、同じパターンで文章を展開することで、読み手から応援されるようになていきます。

つまり今、学んでいるのは、分離しつつある世界を、言葉の力により再び統合へと向かわせる技術です。

商品を売りつけているように思えるかもしれませんが、それは新しい世界を具現化した商品というカプセルに同時に閉じ込められた「言葉」と「イメージ」を解放していく、とても崇高な行為なのです。