家計貯蓄率が64年ぶりのマイナスか?将来、国債を国内だけで消化できなくなるかも

貯蓄
家計貯蓄率は内閣府が国内総生産(GDP)などを算出する「国民経済計算」の数字の1つです。

国全体の家計(個人)の収入から税金や社会保険料を差し引いた可処分所得のうち、消費支出を除いて、貯蓄に回される比率を指します。




貯蓄率がプラスなら1年間に蓄えられるフローの貯蓄が増えていき、マイナスならだんだん減っていきます。

マイナスが続けば、今後の金利や株価の動向にもよりますが、3月末で1630兆円に達する日本の個人金融資産が減少する可能性もあります。

ニッセイ基礎研究所経済調査室長の斎藤太郎氏は「今年1~3月期に増税前の駆け込み需要で個人消費が大きく伸びた為、2013年度の家計貯蓄率はマイナス0.5%になった」と推計しています。

国全体で個人の可処分所得よりも消費支出のほうが多い状態です。

家計貯蓄率の推移

所得の伸びよりも消費の伸びのほうが大きければ、貯蓄に回すお金が減るので貯蓄率が下がります。

さらに、これまでに貯めた貯蓄を取り崩してお金を使う人や、新たに住宅ローンなどの借金をする人が多くなれば国全体として貯蓄率がマイナスになります。

日本人はかつて「消費よりも貯蓄好き」と言われ、家計貯蓄率は1980年代に18%まで上昇。

その後は徐々に低下して2012年度は1.0%でした。

2013年度にマイナスになれば、現在の統計手法でさかのぼれる1980年度以降で初めてとなります。

それ以前の統計でも、マイナスは64年前の1949年度が最後です。

ちなみに経済協力開発機構(OECD)の推計によりますと、2013年(暦年)に家計貯蓄率がマイナスになるのは先進国ではデンマークだけです。

第一生命経済研究所の首席エコノミスト、熊野英生氏は次のように説明しています。

「ちょっと逆説的ですが、消費税率を引き上げたから消費が増えたのだと思います。増税による増収分は社会保障財源になるので、そのメリットは若い現役世代よりシニア層のほうが大きいわけです。そこで、これまで将来への不安から消費をためらい、お金をため込んでいたシニア層が安心してお金を使うようになったのでしょう。アベノミクスによって将来の物価上昇を予想する人が増え、早くお金を使ったほうがいいと考え始めていることも影響しています。」

「駆け込み需要の反動減で2014年度は再びプラスになったとしても、堅調な消費が続けば2015年度以降は継続的にマイナスになる可能性があります。長期的には高齢化が進み、年金以外に収入の無い人が増えて、これまでに貯めこんだ貯蓄をどんどん取り崩すようになるからです。高齢化が進めばマイナスになることはわかっていましたが、想定していたよりもかなり早くその時が来たという感じですね。」

家計貯蓄率がマイナスになるとどんな影響があるのでしょう。

この質問に対して慶応義塾大学経済学部教授の土居丈朗氏は次のように答えました。

「日本はこれまで、個人と企業が貯蓄を増やし、その貯蓄を元手に金融機関が国債を買う資金循環が続いてきました。増え続ける国の借金を国内民間部門の貯蓄で賄ってきたのです。」

「個人の貯蓄が減り始めれば、国債を国内だけで消化できず、海外の投資家に買ってもらう必要が出てきます。巨額の公的債務を抱える日本の国債を、今のような超低金利では海外投資家は買ってくれないでしょう。今のような財政運営は持続不可能になりそうです。」

民間部門の貯蓄のうち、家計の貯蓄が長期的には減少していく一方、企業の貯蓄はどうなるのでしょうか。

1990年代半ばまでは日本全体としてみると、企業は基本的に資金不足で、貯蓄が増えるようなことはありませんでした。

もともと、株主から集めた資金や銀行からの借入金を使って効率的に投資することで、利益を上げ株主に還元するのが企業本来の姿。

個人の貯蓄が銀行などの金融機関を通じて企業の借金になるのは自然なことでした。

ところがバブル崩壊後、民間企業は投資を減らし、借入金を減らし、それでも余った資金は企業内にため込むようになりました。

これは企業の貯蓄が増えていくことを意味します。

2008年の世界的な金融危機以後、企業はますます貯蓄を増やすようになり、金融機関も自己資本の充実などのために貯蓄を増やしました。

企業の貯蓄超過額は年間20兆円以上に達します。

今後、景気回復や政府の成長戦略の効果で民間設備投資が増えれば、企業のカネ余りが解消される可能性はあるのですが、当面、企業の貯蓄が大きく減ることはないでしょう。

少子高齢化で国内市場の縮小が避けられない以上、有望な投資先を見つけるのが難しいためです。

中国経済など、海外のリスク要因も日本企業を慎重にさせています。


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