1月2日のタイSET指数は-5.2%の暴落で2014年の取引を開始しました。
一方、タイバーツはこのところ連続安しています。
タイの金融市場が荒れているのは、タイ軍部が「すべてはそのときの状況次第だ」とクーデターの可能性についてはわざとぼかしたコメントをしているからです。
タイは観光収入がとても重要な外貨獲得源ですので、政情不安で観光客の足が遠のくとそれは収支に影響してきます。
なおタイは2月2日に総選挙が予定されています。
タイ株の急落を受けて、次に危ないと思われる国はインドネシアです。
なぜならインドネシアは経常収支がどんどん悪化していて、外貨準備を取り崩しているからです。
インドネシア株は去年の夏まで人気を集めていました。
この一因は緩和的金融政策にあります。
民間部門の投資は高水準で、輸入も拡大しました。
これが経常収支悪化の要因になりました。
インドネシアは1990年代のバーツ危機に端を発するアジア通貨危機の際、瀕死の重傷を負ったのですが、その後、極めて保守的な経済運営を心掛け、見違えるほど立派な国になりました。
ところが昔の悪いクセがこのところぶり返していて、最近では過去10年で初めて経常赤字に転落しています。
米国の債券買い入れプログラムの縮小を受けて、新興国への投資資金は今後リパトリエーション(本国へ送り返される事)されやすくなります。
だから最近では経常赤字国、財政赤字国を中心に新興国の為替安の現象が見られ始めています。
これは典型的な危機の「前兆」です。
インドネシア中央銀行は通貨防衛のために介入しています。
これが外貨準備の取り崩しを招いています。
インドネシア中央銀行のマルトワルドヨ総裁は1月3日、経常赤字が今年も高水準に留まるという見通しを示しました。
商品(コモディティー)価格の低下や未加工鉱石輸出禁止措置の影響をリスクとして挙げました。
今月導入された未加工鉱石輸出禁止措置で、鉱石資源の生産は大幅に低下すると予想されています。
マルトワルドヨ総裁は記者団に対し、経常赤字の対国内総生産(GDP)比率が3%を上回る可能性があると指摘しました。
「2014年に経常赤字は3%を下回る可能性があるが、注意深く管理しなければ、商品価格の下落と鉱石資源輸出禁止の影響で3%を上回る可能性もある」と述べました。
2013年第3・四半期の経常赤字はGDP比3.8%と、過去最高水準の4.4%だった前四半期から低下しました。
また政策金利の引き上げで通貨防衛を図っています。
そうしないと輸入物価が上昇し、スパイラル的なインフレが懸念されるからです。
さらにリザーブ・リクワイヤメント(RR)ならびにローン・ツー・デポジット(LDR)レシオを厳格化しています。
インドネシアはエネルギー価格に補助金を出していますが、これは国庫を圧迫しています。
そこでガソリン、ディーゼル価格を値上げし、財政健全化を図ろうとしています。
今後の経済成長の見通しですが、海外からの直接投資の鈍化と銀行貸付の厳格化を受けて、GDP成長率は若干鈍化すると思われます。
一方、インフレ率は9.5%前後でピークを打つと思われます。
現在、インドネシアの外貨準備は2012年末の輸入の6.4カ月分から2013年末は4.9カ月分へと目減りしていますが、これが3ヶ月を切るようだと「ドカ下げ→投資資金の、ほぼ全損」という、最悪シナリオも覚悟する必要があるでしょう。