建設業界
企業などからの求人数を職を求める人の数で割った有効求人倍率は、2007年11月から1倍を割り込んでいました。

有効求人倍率が1倍を下回るということは、求職者の方が求人数よりも多い、つまり人が余っているという状態でした。

ところが徐々に求人数が増え始め、2013年11月には約6年ぶりに有効求人倍率が1倍を超えるようになりました。

その後も上昇傾向が続き、今年4月の有効求人倍率は約7年ぶりとなる1.08倍まで上昇しました。

つまり、ハローワークに100人の人が職を探しに行っても、108人分の求人がある状況となっています。

人手不足の大元の原因は、働く人の数に対して企業などが求める働き手の数が上回っていることです。

日本はすでに人口減少局面を迎えていることに加えて、少子高齢化の進展で15歳から64歳までとされる生産年齢人口が減少しており、これからも働き手の数が減少傾向を辿ることが予想されます。

人手不足が進むと、基本的に受け取る給与は増加することになります。

それは働く人にとっては好ましいことですが、人手不足が一段と進むようになると、経済活動全体に大きな支障が発生することが考えられます。

また企業サイドから見ますと、人件費の上昇によるコストアップ要因になります。

それは、日本企業の競争力を低下させることにつながりかねません。

特に建設業や外食チェーンなどは、かなり厳しい状況に追い込まれています。

日本人の看護師だけでは人員を充足することができず、中国など海外で看護資格を取った人を看護助手として、積極的に採用する病院もみられるほど、人手不足は医療や介護の分野でも目立っています。

足もとで景気回復に対する期待が盛り上がりつつあることも、人手不足を加速させる要因になっています。

今後、働き手の不足や、企業の設備投資などによる効率化の遅れのツケが、日本の経済活動の重要な阻害要因になることが懸念されます。

政府は東日本大震災復興や東京オリンピックを念頭に置いて、建設業の人手不足対策として外国人労働者の活用を拡大する方向を示しました。

現在3年間認められている外国人技能実習制度に関して、建設業に限りますが、実習を終えた外国人労働者を2年間「特定活動」として雇用することを可能にします。

また実習終了後、本国に帰国してから1年以上経って再来日した場合に「特定活動」として働ける期間を、3年以内とします。

その措置によって、外国人労働者が実習を終えて本国に帰っても、その後本人を日本に呼び戻すと通算6年間、建設分野の労働者として期待することができます。

外国人労働者を使ってわが国の人手不足を解消しようという試みは、流通や医療・介護などの分野にも見られます。

医療・介護では、経済連携協定(EPA)に関連して来日したフィリピンやインドネシアなどの看護師だけではなく、最近中国などの看護師資格を取って来日し看護助手として病院で働きながら、わが国の看護師試験を目指す人が増えているそうです。

もともと高い給与を目指して日本の病院に職を求める中国人などは、かなり多く、そうした希望者を斡旋するNPOなども増えているといいます。

漢字文化を持つ中国人にとって、日本で准看護師の資格を取得すると4年間、さらにその上の看護師の資格を取ると無制限に、わが国で働くことができます。

もう1つ政府が提唱する対応策に、女性やシニア層の労働力化があります。

一定の年齢層以上で家庭の主婦や定年退職したシニア層など、従来労働力としてあまり期待されてこなかった層を、労働市場に復帰させることを考えています。

これらの方策は、いずれも相応の効果を生むことが期待できるものの、それなりの社会的インフラの整備が必要になります。

たとえば、家庭の主婦を職場復帰させるためには、子どもの保育所の整備が必須の条件になります。

また、シニア層をオフィスに戻すためには、彼らに対する役割期待を明確にするなど、企業側でも多くの準備が必要になります。

それらを短期間に整備することは、至難の業というほかありません。

そうした状況を総合的に考えますと、短期的な外国人労働者の利用、中長期的な社会インフラの整備による女性・シニア層の労働力化を、同時に進めることが重要です。

そしてもう1つ、長期的な視点に立った少子高齢化対策、特に出生率を引き上げるための政策を真剣に考えるべきです。

もともと国の実力と人口には、密接な関係が存在します。

国の実力の1つである経済をとっても、人口が多ければ労働力が潤沢で、一般的に生産活動は活発化しやすくなります。

また人口が多ければ、その分だけ消費活動も拡大し易くなります。

生産と消費活動が拡大基調を辿ることができれば、当該国の経済が堅調に成長することができるはずです。

米国を除く主要先進国は、多かれ少なかれ人口の減少や少子高齢化の問題を抱えています。

主要先進国の中では、フランスのように出生率の引き上げに成功した国もあります。

日本は、そうした成功例を参考にして早期に思い切った政策を打つべきです。

最近、ようやく2050年に1億人以上の人口を維持する方針が打ち出されたものの、具体的な対応策はほとんど形になっていません。

子育て支援金の支給などもそれなりの効果はあるでしょうが、もっと重要なことは、社会全体で子どもを増やすコストを負担するという意識ではないでしょうか。