昔から柳の木の皮には鎮痛解熱作用があることが知られており、古来よりそのまま煎じて服用されてきた。そして長い間の経験則から、その効果と安全性は間違いがないものと見なされてきた。

これを近代に入って医学的に検証した結果、柳の木の皮に含まれるサリチル酸という成分が鎮痛解熱効果をもつことが判明し、この成果をもとにサリチル酸を用いた鎮痛解熱剤が作られるようになる。

しかしこの薬、副作用が強くてなかなか使いにくい。

柳の木の皮を煎じていた時には副作用はなかったのに、有効成分を取り出して薬にしたら副作用が出るようになったのである。

結局その後、副作用の少ないアセチルサリチル酸を化学的に合成して現在のアスピリンなどの薬が作られるに到ったわけだ。しかし、そのアスピリンですら副作用の危険性が指摘されているのはよく知られているところだ。

恐らく柳の木の皮には、まだ科学的に解明されていない副作用を和らげるような成分が含まれているのだろう。もしかするとサリチル酸と一緒に摂取することで何らかの働きをする成分があるのかもしれない。

しかし、その成分やメカニズムはまだ解明されていないので、柳の木の皮は医学的エビデンスがある医薬品としては認められていない。

代替療法全否定派は、柳の木の皮の鎮痛解熱効果を主張する人間に向かって「そんなに柳の木の皮に効果があるなら医学的エビデンスが揃って医薬品の認定を受けているはずだ。それがないということはインチキだ。詐欺だ」と糾弾しているのと同じことなのだ。

医学的エビデンスと一口に言うが、それを証明するためには、莫大な資金と手間が必要になる。現在、1品目あたりの新薬開発の費用は200億円以上だという。

柳の木の皮を医薬品として使えるように臨床試験を実施して医学的エビデンスを揃える製薬会社がなぜないのか。答えは単純明快。儲からないからだ。

200億円の投資をして「柳の木の皮が痛みや熱に効きますよ」と証明したら、多くの人々はアスピリンを買わずに街路にある柳の木の皮をタダで削ってきて煎じて飲むだろう。

そんな馬鹿な研究をする医薬品メーカーなどないのである。

そしてもう一つ重要なことは、「挙証責任は告発する側にある」という点である。

よく、代替療法を「インチキだ」と指摘している人間が、「インチキだと主張するなら、その根拠を示せ」と問われ、「なぜ私が根拠を示す必要があるのか。この療法に効果があると主張する側が、医学的エビデンスを示すべきだ」と言い返すパターンを見かける。

それは、200億円かけて臨床データを集めて厚生労働省の認可をとってこい、と要求しているに等しい。

近代法が挙証責任を告発者側に要求するのは、その方が遥かに容易で合理的だからである。

「インチキだ」ということを立証するのは、比較的簡単な検証で済む。

代替療法の検証においては、同じ療法を施した調査対象群と、施さなかった対象群の間で、症状の改善に統計的な有意差が見られるかどうかを測定すれば良いのである。

そこで有意差がない、と判定されて始めて、その療法は「インチキだ」もしくは「有効性がない」と指摘して良いことになる。

それだけの手続きと準備を経ずに、単に医学的エビデンスがないという事実だけを錦の御旗に「インチキ」とまで言い切るのは、すでにプロパガンダであり、決してがん患者のためになる発言ではないのである。