中国の高級住宅街
中国政府が景気てこ入れのために不動産市場に対する規制緩和に乗り出したことで、昨年末から住宅価格の上昇が続き、その勢いはとどまるところを知りません。

特に主要都市での上昇率が高く、中国主要100都市の8月の平均住宅価格は前年同月比で8.6%上昇しました。

しかし、不動産開発会社が大量の売れ残りの在庫を抱えていることで住宅価格の上昇は建設業界の活性化にはほとんどつながっていません。

建設業者が新規プロジェクトに着手するよりも在庫削減を優先していることで、住宅着工件数の回復ペースが鈍り、今年1-7月では7.1%増にとどまりました。

一方、同期間に住宅販売面積は27.1%増の5億4730平方メートルに達しました。

中国での住宅着工ペースの鈍化は次のような影響を及ぼしています。

・中国の経済成長率が23年ぶりの低水準

・鉄鋼とセメントの需要が低迷

・オーストラリアやブラジルのコモディティー(商品)輸出に打撃

・英豪系鉱業大手リオ・ティントは中国の需要不振などを理由に、昨年半ば以降、2200の人員を削減

中国 住宅価格の推移とセメント製造量の推移
(図表)前年比でみた住宅価格の推移(左)とセメント製造量の推移

住宅価格の上昇は、価格を国民の手の届く水準に維持し、拡大している中間層に家を持つ夢を与えるという中国政府の政策目標を台無しにする恐れもあります。

8月に北京の住宅価格は前年同月比で22.5%上昇、広州では24.2%上昇しました。

ほかの都市の上昇率はこれほどではなく、上海では7.7%の上昇でした。

中国指導部は、住宅価格を抑えたいと思いながらも、経済成長を促進しなければならないという状況で板挟みになっています。

政府は住宅市場の沈静化のために、2010年から一部の都市に課している2軒目の住宅購入制限などの規制を維持したい考えです。

また、住宅投機の抑制を目的とするキャピタルゲイン課税を導入する方針を明らかにしているほか、上海と重慶で試行されている不動産税を全国に広げることを検討しています。

しかし、水面下では、地方政府が経済成長と税収を支えるために建設業界を後押ししようと、融資条件と規制を緩和しています。

4-6月期には住宅ローンが前年同期比21.1%増と急増しました。

10年以降、積み上がっていた需要が一気に市場になだれ込み、住宅販売件数、販売価格、不動産開発会社の利益を押し上げています。

中国2位の不動産開発会社で業界の指標と見なされている中国海外発展(チャイナ・オーバーシーズ・ランド・アンド・インベストメント)の1-6月期(上半期)決算は31.6%の増益となりました。

地方政府の重要な財源である土地売却収入も大幅に増えました。

売れ残った住宅在庫は膨大な量に上ります。

昨年末時点で、中国で建設中の住宅の面積は40億平方メートル余りと、新規着工が一切なかった場合でも4年分以上の需要を満たせる量に達していました。

この膨れ上がった在庫は、中国政府が2009年に打ち出した景気対策がもたらしました。

政府は景気浮揚のために、銀行融資を急拡大させ、不動産規制を緩和しました。

これにより、売り上げと着工件数は急増しました。

ここにきて、平均住宅価格が上昇しているにもかかわらず、一部の不動産開発会社は在庫処分のために大幅な値引きを行っています。

上海郊外のイタリア風高級住宅「ベラジオ・ビラズ」は、発売から1年間で売れたのは146戸のうちわずか十数戸でした。

これを開発した楽家置業は価格を25%引き下げたほか、購入者に「ランドローバー」をプレゼントしています。

高級住宅需要の主なけん引役である所得の伸びは今年上半期に2007〜2012年の平均9.4%から6.5%に減速しました。

昨年は中国の都市部の人口が2100万人増えるなど、都市化は急ピッチで進んでいますが、移住者の大半は新しい家を購入できるほど裕福ではありません。

北京大学の最近の調査によりますと、約4900万人が2軒以上の住宅を保有しています。

中国政府は、規制の話を続ける一方で、住宅価格と所得の足並みをもっとそろえる動きを示唆するなど、住宅市場にあいまいなシグナルを送っています。

ムーディーズのアナリストは、北京や広州、深センなど主要都市では「さらなる価格上昇が消費者から住宅を遠ざけ、新たな不動産業界の沈静化策を招く可能性がある」と指摘しています。