中国、国債バブルついに崩壊か 不正取引が混乱加速

中国の金融資本市場でまた一つバブルがはじけました。昨年夏の上海株暴落に対し、今回の主役は債券です。およそ3年も上昇続きだった中国の国債相場が足元で急落に転じています。米国の利上げなど外部要因も大きいのですが、ある中堅証券会社の元社員による不正取引と損失の露見が、崩落に拍車をかけました。中国当局の「バブル退治」の動き次第では、市場にさらなるショックが走る可能性があります。




発端は2016年12月15日、中国南部の広西チワン族自治区に本社を置く国海証券が、上場先の深圳証券取引所を通じて発表した声明です。一部メディア報道を受けて社内調査をしたところ、元従業員2人の不正が判明しました。報道の見出しは「債券相場の下落で国海証券の責任者が失踪」というものでした。

国海の債券部門元幹部らが社印を偽造したうえで会社の承認を得ずに他の金融機関と債券取引を繰り返していました。2016年11月の米大統領選後、米国の利上げ観測や中国景気の持ち直しを受け、取引相手が一時的に預かっていた債券に損失が発生しました。現地メディアによりますと取引に関わった銀行や証券会社は20社超。取引規模は計100億~200億元(約1700億~3400億円)、損失は10億元近くに達するといいます。

国海は自社株式の売買を12月15日から停止。元社員を刑事告訴する方針を示す一方、取引相手を集めた会合では「社印が正しいものかどうか確認しなかったほうも悪い」と開き直ったといいます。お金が返還されなければ金融システムに損失が拡散しかねません。金融機関が手元の債券の投げ売りに動くかもしれません。こんな恐怖感から市場では中国の国債に売りが殺到。10年債利回りは12月16日に3.4%超と1年4カ月ぶりの水準に上昇(価格は下落)しました。わずか2日で0.3%近い上げ幅です。

問題は、元社員が印鑑を偽造してまで手を染めた取引が「中国の証券業界ではかなりよく聞く手法」(日系証券の調査担当者)だったという点です。中国語で「代持」と呼ばれています。代理保持といった意味です。国債相場の上昇が続くとみた国海の担当者は市場で国債を買い付け、それを担保にA銀行からお金を借ります。その資金でまた国債を買い、B証券に担保として預け、お金を借ります。また国債を買うという繰り返しです。

代持は現金と国債を一定期間交換する債券貸借(レポ)取引に似ており、それ自体は中国でも合法。ですが国海は会社の規定を超えて過大にレバレッジ(てこ)をかけ、持ち高を膨らませていたようです。グレーな取引をしていたのは同社だけではないとの見方も多いようです。2013年末に5%近かった10年債利回りを今年10月に過去最低の2.6%台まで押し下げた「債券バブルの主因」ともささやかれていました。

借金を重ねた投資といえば、昨年半ばまでの株式市場で急膨張した信用取引が記憶に新しいです。その後の上海株暴落で無残な結末を迎えたわけですが、中国の市場関係者はそこから何も学ばなかったようです。総資産額で中国の30番目前後とされる上場証券会社が、極めて投機的な債券取引にのめり込んでいた衝撃は大きいものでした。国海が12月20日に認めたところによりますと、証券監督管理委員会(証監会)は12月15日に早速 同社に検査チームを送り込みました。

折しも習近平指導部は12月14~16日、来年の経済運営方針を議論する中央経済工作会議で「金融リスク抑止を(政策上の)より重要な位置に据える」と決めました。監督機関は保険会社による上場企業株の投機的な買い集めを禁止し、資金流出につながる海外M&A(合併・買収)を規制しました。国債バブルにもかねて大きな懸念を抱いており、最近では投機家が資金を調達しにくいよう、短期金融市場の金利を高めに誘導していた。

共通する狙いは「短期調達した資金で、流動性の低い長期資産に投資する『期間のミスマッチ』を減らし、レバレッジ解消を進めることにある」と米運用会社のファンドマネジャーは分析しています。振り返ればリーマン危機や1990年代のアジア通貨危機といった過去のショックも、このミスマッチと高いレバレッジが遠因でした。

その意味で、今回の国債相場急落は中国当局が意図的に起こした「バブル体質の改善の取り組み」といえなくもありません。願わくは、その「薬」が効きすぎて世界に混乱を振りまかないように、ということです。


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