中国の銀行
中国経済の矛盾が露呈し始めています。

景気低迷期にありながら都市部の不動産価格の騰勢は収まらず、二重の金利体系のもとシャドーバンキングのリスクが拡大しています。

さらに労働力不足が潜在成長率に影を落とし始めました。

シャドーバンキングの膨張抑止や投資依存からの脱却を狙って金融を引き締め方向にすれば、経済が急減速するリスクがあります。

他方、緩めるとシャドーバンキングの矛盾が拡大するリスクに直面するため、極めて微妙なマクロ政策のかじ取りを求められています。

中国インフレの現状

中国国家統計局によれば、2013年の消費者物価指数(CPI)は前年比で2.6%上昇し、政府目標の3.5%以内に抑えることができています。

しかし、中国の実際のインフレ率が既に目標値を大幅に上回っていることは、騰勢が収まらない不動産市況やシャドーバンキングの急成長が如実に物語ります。

標準住宅(70平方メートル)の販売価格は、家計の平均年収と比べて、北京が22.3倍、上海が15.9倍(共に2011年実績)となり、マイホーム実現の夢がますます遠のく庶民の間では、不満が高まっています。

二重の金利体系

金融機関の預金金利に代表される規制金利と、シャドーバンキングなどで提示される市場金利というように中国では二重の金利体系が存在します。

シャドーバンキングが急拡大した原因は、規制のせいでインフレに追いつけない金融機関の預金金利に不満な資金の出し手(投資家)側と、投資し過ぎたために、高金利でもいいから借り換えをしないと過去の借金の償還ができない資金の取り手側のニーズがマッチした為。

そして、最近の中国では、年平均で物価が1割程度上昇しているというのが生活者の実感であり、この期に及んで、マンションがまだ売れているのは、インフレによる目減りを嫌って、キャッシュを実物に換えておきたいニーズが、投資家の間にある為です。

北京や上海などの大都市では、足元の新築住宅販売価格は前年比で20%を上回る上昇を示しています。

人民元高容認

為替政策を金融政策の一環と位置付ける中国当局は、インフレ抑制を目指し、既に人民元相場の対ドル上昇を容認し始めました。

上海外為市場の人民元相場は、昨年2月の安値1ドル=6.2454元から、今月半ばに6.0406元まで、約3.3%上昇しました。

インフレ率は今後さらに上昇すると予想され、人民元の対ドル上昇のペースが速まり、預金準備率の引き上げと利上げも視野に入るとみられます。

インフレ率の上昇、不動産価格の高騰、労働市場における賃金上昇を勘案すると、低成長であっても、景気はむしろ過熱していると認識すべきでしょう。

インフレ率が3.5%以内という政府の目標を超えてくると、明確に引き締めの方向性が打ち出されると予想されます。

労働力不足

中国国家統計局が20日に発表した2013年国内総生産(GDP)成長率は、前年比7.7%増となりました。

リーマンショック後の平均潜在成長率は8.8%とされ、統計上、8四半期連続の低迷期にあります。

前回の低迷期(2008年第4四半期―2009年第2四半期)との比較では、成長率に大差ありません。

しかし、CPI上昇率は前回が0.1%だったのに対し、今回は2.6%に上昇。

さらに前回は住宅価格が下落していましたが、今回は急騰しています。

中国では、生産年齢人口が減り始め、農村部における余剰労働力が枯渇した結果、労働力は過剰から不足に転換していて、潜在成長率は大幅に低下したと考えられます。

景気過熱の現状から判断して、中国の潜在成長率は、すでに足元の実績値を下回る7%程度まで下がっているとみられます。

潜在成長率が従来の8.8%(リーマン・ショック以降の成長率実績の平均値)であれば、7.7%という現在の成長率は景気の低迷を意味しますが、潜在成長率が既に7%程度に低下しているとすれば、これはむしろ「好景気」を意味します。

一方、中国の国家統計局は、2012年の中国の労働年齢人口(15―59歳)が初めて減少したと発表しました。

求人倍率は前回の低迷期には、一時0.85まで低下しましたが、今回は一貫して1を上回り、労働市場は過熱気味となっています。

中国では今月末から旧正月の連休が始まりますが、沿岸部工業地帯では例年よりも早く休暇に入る工場が目立っています。

欧米を中心に受注が低迷していることや、労働者不足による賃金上昇などが理由です。

投資頼みの経済成長

投資頼みの経済成長にも黄信号が点灯しています。

前回の低迷期には4兆元の内需拡大策と超金融緩和が実施され、景気はV字型回復を果たしましたが、今回は大規模な経済対策は実施されていません。

中国は、行き過ぎた金融緩和とこれに誘発された過剰投資によって景気をカサ上げしてきたが、今後は、投資の削減を通して、健全な成長軌道に戻さなければならないという認識がエコノミストの間には広がっています。

現状では、消費と外需合わせてもGDP成長年率4%分に達していません。

このため、投資に3%以上の成長カサ上げの効果を求めてきたことになります。

しかし、投資にブレーキをかけて、たとえば2割削減するだけでも、反動で経済がゼロ成長に落ち込むリスクがあります。

金融当局としては、シャドーバンキングの増大が心配なので、引き締めの方に舵を取りたいという意向があると思うのですが、投資のアクセルから足を離すと、景気が急減速する可能性があり、指導部はまだ覚悟を決めかねているのではないかと思われます。