財務省、インフレ時に有利な物価連動国債を約5年ぶりに発行

物価連動国債
財務省は、国債の元本が、生鮮食品を除く全国消費者物価指数(CPI)が上がれば増え、下がれば減る「物価連動国債」の発行を、およそ5年ぶりに再開しました。




物価連動国債

物価連動国債

最初の物価連動国債の発行は2004年3月でした。

物価連動国債は一般的な国債と違って、インフレ時に有利とされています。

ピーク時の発行残高は10兆円ほどありましたが、2008年秋のリーマン・ショック後に海外のヘッジファンドに売られ、価格が暴落しました。

デフレもひどくなり、発行をやめていました。

しかし、日銀が2%の物価目標政策を4月4日から導入した影響で、先行きの物価上昇期待が広がり、物価連動債の需要が見込めると財務省は判断し、再発行に踏み切りました。

また、今回の発行額は3,000億円で満期は10年。

物価が下がっても満期時の元本は購入時を下回らないよう政府が保証する仕組みに変更しました。

物価連動国債

麻生財務相は「幅の広い投資家からの需要が出てくるであろうということを期待している」と述べました。

10月8日の入札結果は、最高落札利回りがマイナス0.3520%。

表面利率0.10%、発行価格104円65銭。応札倍率は3.74倍。発行日は10月10日。

通常の利付国債の利回りから物価連動債の利回りを引き算して求める期待インフレ率の指標、ブレーク・イーブ・インフレ(BEI)率は1.00%程度とみられますので、市場では「事前予想に比べてかなり強い結果」との声が出ています。

安倍晋三政権の経済政策の中枢を担ってきた岩田規久男・日銀副総裁や本田悦朗内閣官房参与らは、BEIを重視してきました。

物価連動国債の市場価格と、同一市場における固定金利債(通常の債券)の市場価格とを比較することで、金融市場がどの程度のインフレ率を予測しているのかが分かる、とされています。

通常の長期債券の利率(長期金利)は、実質的に利息が増える分とインフレのリスクヘッジ分に分けられます。

物価連動国債の場合、元本と利率の両方がインフレによって増えるために、利率は「実質的に利息が増える分」のみになります。

したがって、この2種類の債券利率を比較することで市場の期待インフレーション率が分かります。

例えば、10年後1万円が返済される長期債が6139円で取引されていたとします。

この場合、名目金利は年率は5%となります。

一方で、10年後の返済額が「インフレ調整現在価値で1万円」である物価連動国債が7441円で取引されていたとします。

この場合、実質金利は年率3%となります。

この5%と3%の差は2%(実際は除算なので1.94%ですが、減算でも近似値が出ます)となります。

つまり、金融市場は10年間の間に年平均2%のインフレが起きると想定していることになります。

このようにして、金融市場から得られる情報により、インフレ率に対応するための適切な金融政策を採用できるわけです。

期待インフレ率の情報はインフレターゲット政策に必要です。

インフレターゲット政策では、経済における物価水準を対象にしなくてはいけません。

しかし、統計上発表される「物価指数の騰落率」は、統計作成上、時間的に遅れて発表されます。

このような「過去の物価変動率」を参考にすると「バックミラーを見ながら運転する」みたいに政策転換を誤る可能性があります。

そこで、近似的に現在の物価変動率を示唆する期待インフレ率を金融市場から抽出する必要があります。

その1つの手段として、インフレ連動債が用いられます。

物価連動債が再発行されることで市場に厚みが出て、指標としての有用性が高まると期待しています。

SMBC日興証券の山田聡シニアクオンツアナリストの試算によりますと、既発債は残存約5年でBEIが1.7%程度でした。

2014年4月と2015年10月の消費税引き上げが与える影響(2014年4月に2%ポイント、2015年10月に1.3%ポイント)を差し引くと実質BEIは1%程度。

これに対して今回の新発債から計算される実質BEIは0.7%と先行きの期待インフレ率は下がる形になりました。


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