英国の国民投票は、EU離脱支持が残留支持を上回り、今後2年をかけて離脱することが決まりました。EU加盟国という理由で日本の支社もEUの中で1カ所選ぶとすればロンドン、ということだったので、多くの日本企業は英国から撤退するでしょう。他国の企業も同様にEU諸国との関係は弱まり、移動の自由もなく、関税もかかる英国は敬遠されるはずです。

社会が混乱する中で経済は発展できません。今後、国内は二分され続けるでしょう。社会の分断、それが最も経済を壊します。しかも、離脱しないと高をくくっていたのはエリートの金持ち達であり、投資家たちです。そして、キャメロン首相はパナマ文書にも名前が挙がっていたこともあり、その象徴です。

エリート社会と低所得者社会が元々分断しているところに、この投票結果は経済の崩壊を決定付けました。ロンドンは荒れ、投資も人々も出て行くことになるでしょう。欧州経済も大きなダメージを受けます。

移民問題に対して経済的に豊かな国ほど国民に根強い反対があるのが当然なのですが、ドイツ、フランスなどでは「英国が離脱なら、うちも」とはならないでしょう。しかし国内に離脱派が力を持つことになり、彼らを納得させるためのコストがかかります。

移民問題と離脱問題でいえば、低所得者はあからさまに「移民反対、離脱賛成」なのに対し、インテリ、金持ちは統合の恩恵を最も受けていますし、移民の影響は受けていませんから「移民に寛容、離脱反対」となり、社会の分断は深まるでしょう。この状況が社会を弱くし、経済を弱め、欧州全体に悪影響を与えます。

これまで欧州の経済の伸びは、EUを拡大し続けることによって維持してきました。中所得国を取り込み、そこを新しい市場とし、同時に安い労働力の供給地とし、いわゆる高度成長を生み出す二重構造を意図的に作ってきたのです。それが終わります。

そしてイギリス以外の国でも離脱リスクが高まれば、欧州への外からの投資は減少しますので世界の中で欧州はおいていかれることになります。欧州が衰退すると世界経済は縮小しますから、世界経済もマイナスになります。

金融市場は、すべてのショックを直ちに織り込もうとしますから、為替が動いてリスクテイクは弱まり、株価も不動産もマイナスになります。日本は特に為替に過剰反応しますから、実体経済はそこまで悪くなくても株価に連動して株式市場は下がったままになるでしょう。

英国の欧州連合(EU)離脱が決まり円高が進んだことは、日本の輸出企業には打撃です。円高に歯止めがかからなければ輸出採算の悪化を通じ、上場企業全体の利益額が下振れする懸念があります。

上場企業の2016年度の想定為替レートは平均1ドル=110円、1ユーロ=123円程度。仮に1ドル=100円、1ユーロ=110円が1年間続けば、トヨタ自動車やキヤノンといった主要輸出企業25社の営業利益は、すでに公表している現時点の想定額から9000億円ほど下振れしそうです。予想営業利益合計の1割強が吹き飛ぶことになり、前期比では2兆5000億円程度の目減りとなります。

トヨタでは1ドル=105円、1ユーロ=120円の想定で今期の連結営業利益を前期比40%減の1兆7000億円と見込んでいます。1ドル=100円、1ユーロ=110円なら、さらに2000億円規模の減益要因になる計算です。

日本経済新聞社の集計では、上場企業(金融・電力など除く)の2017年3月期の経常利益予想は期初時点で前期比3%増ですが、円高が進めば下振れの懸念が強まります。大和証券の石黒英之シニアストラテジストは、1ドル=100円、1ユーロ=115円が続いた場合「今年度の主要200社の経常利益は前年度比3.6%減となる」と指摘しています。