米国債
アジア諸国は1997年の危機を教訓に、市場の不安定化を鎮める武器として外貨準備を競って積み上げ、今では7兆ドル(約691兆円)近い外貨準備の大半をドルで保有しています。

1兆1000億ドル相当を持つ日本や1兆3000億ドル相当を保有する中国が、その一部を売るという噂が流れただけでもドル急落を招き、円や人民元の大幅高および米国債暴落による巨額損失をもたらすことになります。

円安誘導によるデフレ脱却と経済再生を目指す日本政府にとって円の急上昇はアベノミクス失敗につながりますし、経済改革を進めようとする中国にとっても困ったことになりますので、米国債の売却どころか買い続けざるを得ません。

3月に北京で習近平国家主席と会ったルー長官が財政問題で危機を作り出さないような行動を議会に呼び掛けたのは米国債の筆頭購入者である習主席へのメッセージでもあったかもしれません。

アメリカは経済・軍事大国である上、世界のどこでも通用するドルを自ら印刷する基軸通貨国で、元本や利息が踏み倒されるリスクはゼロに近いと信じられていたので、アメリカ政府の借金証書である米国債が大量に買われました。

しかし、今では財政赤字の拡大やFRB(連邦準備理事会)のドル大量供給によるインフレ懸念などでドル下落のリスクが高まっているため、できれば米国債保有の割合を減らしたいのが本音です。

これほど大規模な資金配分の誤りを世界はかつて経験したことがありません。
ドルを買い増すことをやめ、資金を国内のインフラ整備や教育、再生可能エネルギーの研究開発などの未来への投資に充てることを考える時期に来ていると思います。

サミットようなハイレベルでの議論を通じてアジアが自国の貯蓄を取り戻す方策を見つければ、その時こそ巨額のドル資産はアジアにとって問題ではなく、課題解決に向けた糸口になるでしょう。