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アメリカ連邦準備理事会(FRB)が昨年12月以降、「量的緩和(QE)」の解除を決めたのに伴い、
中国では経済がハードランディングする懸念が高まっています。

QEとは2008年の金融危機以降、FRBが市場への資金供給を増やすために、毎月実施してきた大量の長期資産買い取り策のことです。

中国経済のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は堅調なことから、政策立案者らにとって、ハードランディングを回避できる余地はあります。

しかし、それは彼らが中国のシャドーバンキング(影の銀行)をきちんと統制することが前提となります。

今のところ、中国の消費と投資の伸びは、ほぼ2013年並みの水準を維持すると見られています。

一方、欧米諸国を中心とする先進国の景気が回復してきたことを受け、中国は外需の勢いを取り戻しつつあります。

アナリストによれば、中国の輸出の伸び率は今年は10%を超え、2013年の伸び率を3~4ポイント上回る見通しです。

その結果、2014年のGDP(国内総生産)の伸び率は7.5~8%と、極めて健全なペースとなりそうです。

問題は、中国の金融セクターが近年、膨大なリスクを積み上げている点です。

例えば通貨供給量(マネーサプライ、M2)は昨年末に、110兆7000億元(約1866兆6000億円)に達し、GDPのほぼ2倍の規模にまで膨れ上がっています。

このことは恐らく、中国経済において信用供与が過剰に行われていることを意味します。

そのため中央銀行は、マネーサプライを抑制すべく、商業銀行の貸し出し条件を強化することで、信用の伸びをマネーサプライの伸び以下に抑え込もうとしました。

しかし、一連の対策にもかかわらず、通貨供給量の伸びにブレーキをかけることはできませんでした。

それどころか、2013年の通貨供給量の伸びは、2012年の水準をも上回りました。

しかも金融仲介機関としての商業銀行の役割を規制したことによって、規制外のシャドーバンキングの拡大を助長する形となり、中国経済をよりリスクにさらすこととなりました。

今や新たなアプローチが必要なことは明白です。

中国の銀行制度に潜む危険性を十分に理解し、そうした理解の上に立った新たな政策を導入する必要があるということです。

通貨供給量の急増が、過剰に信用供与が行われていることを反映しているのは間違いないとしても、中国では通貨供給量は過剰流動性の正確な尺度ではありません。

なぜなら、商業銀行は理財商品を利用して貸し出しをバランスシートから外すことで、中央銀行が課す高い預金準備率や量的規制を簡単に回避することができるからです。

こうした慣行により、あたかも通貨供給量が拡大しているかに見えますが、人為的な信用供与の拡大に拍車をかけているのです。

つまり、中国の金融当局が、正式な金融システムを国内の民間資本に対して開放しようとしてこなかったこと、預金金利の自由化にも消極的できたことが、まさにシャドーバンキングの拡大を招く大きな原因となっているのです。

中国経済で飛び抜けて重要な成長の牽引役となっている中小企業(SME)は、正式の金融システムから十分な貸し出しを受けられないため、正式ではない貸し出し経路に頼らざるを得ない状況が今も続いています。

シャドーバンキングが、往々にしてリスクの高い貸出先である中小企業の資金調達の最大の源泉となるにつれ、中国経済における金融リスクは凄まじい勢いで増大しています。

中小企業を巡る困難な状況に拍車をかけているのが、資本コストの上昇です。

中央銀行がマネーサプライの伸びを抑えようと、引き締め策を重ねてきた為、資本コストが上昇しているのです。

昨年6月、銀行間貸出金利が年率10%以上に急上昇し、昨年12月にも再び急騰しました。

中小企業は最終的に、こうした資金調達コストの上昇も背負わなければならず、その分、経済成長全体に寄与する力を奪われています。

例えば、中国の電子商取引最大手のアリババ(阿里巴巴)は昨年、資金を調達する手段として、米国の電子決済システム「ペイパル」と似た電子決済システム「支付宝(シーフーパオ=アリペイ)」の導入に踏み切りました。

アリババはわずか数ヵ月で8500万人の小口投資家から4000億元(約6兆7450億円)に上る資金をかき集めました。

中国のインターネットサービス大手、テンセントもアリババに対抗すべく同じ戦略を取っており、両社とも可能な限り多くの投資家を引き付けようと、しばしば年率6~7%という高いリターンを提供しています。

問題は、こうして集められた資金の大半が、銀行間市場に投入されているために、中小企業は10%を超える金利を負担しなければ資金調達ができない状態に追い込まれていることです。

中小企業の場合、借り入れに当たっては金利にさらに3%の中小企業向け融資保証がかかります。

こうした持続不可能な高金利が、深刻なリスクとして実体経済に影を投げかけています。

この問題が最も端的に表れているのが不動産部門です。

不動産デベロッパーは、多額の流動性を必要としていますが、正式な金融システムから十分な資金を調達することができないため、これまで極端に高い金利で巨額の資金を借り入れてきました。

ですが多くの場合、住宅需要は予想ほど伸びていません。

つまり、中国ではデフォルト(債務不履行)のリスクが高まりつつあり、今やその影響が金融危機のリスク全体に波及しかねない状況にあります。

中国がここまで大規模な金融危機のリスクに直面したことは、かつてありませんでした。

ですが、金融当局は、このリスクの大きさもその根本原因も理解しているようには思えません。

中国経済は確かに債務の水準を引き下げる必要があるでしょう。

しかし金融当局がなすべきは闇雲に信用の供給を絞り込むのではなく、金融部門の抜本的改革に取り組み、預金金利の自由化や量的規制の解除を進めるべきです。

そして民間金融機関の設立を認めることが何より重要です。

中国の長期的な金融・経済の健全性を確保するには、こうした課題に取り組むことが不可欠です。

ですが、それには金融当局の根本的な発想の転換が前提となります。

これこそが、現在の中国が直面している本当の試練と言えるでしょう。